総務省「住民基本台帳人口移動報告」によると、2025年の東京圏は12万3,534人の転入超過となりました。東京への人口集中が続く一方、地方に移住し、新たな生活を始める人もいます。夫婦で話し合い、東京から地元の長野県へ移住した42歳の女性。子どもにも恵まれ、仕事も生活も充実していましたが、ある日、小学校時代の同級生が自分について話していた内容を知り、ショックを受けます。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。
都落ちだね…〈世帯年収1,320万円〉東京から地元へUターンした42歳女性。約30年ぶりの小学校の同級生からの「まさかの評価」にショックを受けたワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

「神童だったのにね…」「都落ちだね」知人からの一言

ある日、ナオミさんは高校時代の友人と食事をしていました。そのとき、友人から「そういえば、この前、小学校の同級生に会ったよ」と話しかけられました。ナオミさん小学校時代の同級生とはほとんど交流がありませんでした。友人が口にした名前も、最初は誰のことかわからなかったといいます。

 

「小学校を卒業してから30年近く会っていない人でした。友達というほど親しかったわけでもありません」

 

その同級生は少し前、地元のスーパーで買い物をしているナオミさんを見かけていたそうです。

 

「ナオミちゃんって、こっちに戻ってきているんだね。東京のいい大学に行ったんでしょう? 国際系の学部に進んだって聞いていたから、海外にでも行って活躍しているのかと思っていた。意外だね。小学校の頃は頭も良くて神童と言われていたのにね」

 

さらに、こんな言葉も口にしていたといいます。

 

「東京で活躍していると思っていたのに、地元に戻ってきたってことは、何かあったのかな? 都落ちだねー、もったいないよね」

 

友人は、同級生の発言に衝撃をうけ、「どうなんだろうね?」とその場はお茶を濁してさっさとその場をあとにしたそうです。この友人も、大学卒業後は東京で働き、30代で公務員に転職したUターン経験者です。

 

「私もUターン組だから陰ではそんなふうに言われているんだなって悲しくなっちゃったよ。私も根掘り葉掘り聞かれそうになったし。まあ、あの人たちとは関わらないほうがいいと思ったよ」と友人はぐったりした様子で話しました。

 

ナオミさんもその話を聞いて、まず驚いたといいます。

 

「正直、ゾッとしました。だって、その人とは小学校以来ほとんど接点がないんですよ。私は相手の名前すらすぐには思い出せなかったのに、向こうは私が大学で何を専攻したかまで知っているんですから」

 

ナオミさんには、その同級生に大学の学部を直接話した記憶がありません。小学校卒業後は別々の学校へ進み、連絡を取り合ったこともなかったといいます。

 

「たぶん、誰かから聞いた話が地元で伝わっていたんでしょうね。どこまで知られているんだろうと思うと、ちょっと怖くなりました」

 

相手が知っているのは、ナオミさんの進学先など、断片的な情報にすぎません。東京でどんな仕事をしてきたのか、結婚して家族で長野へ移住したことも知らなかったようです。

 

「私だって、その人が今どんな仕事をして、どんな暮らしをしているのか知りません。興味もない。でも、相手は私が地元に戻ってきたというだけで、何かうまくいかなかったんじゃないかと思ったわけですよね」

 

ナオミさんは、現在の仕事の状況や世帯年収を伝えて、誤解を解こうとは思いませんでした。さらに、少し考えてから、こう続けました。

 

「仮に私が東京で仕事を失って、地元に戻ってきたのだとしても、それが何だというんでしょう。人生にはいろいろなことがありますよね。それを、ほとんど知らない人から勝手に評価されるのは、気分がよくありません」

 

友人から聞いたのは、ほんの短い立ち話の内容でした。それでもナオミさんにとっては、自分の知らないところで経歴が語り継がれ、現在の生活まで推測されていたことが、思いがけず不快な経験になったといいます。

 

友人とは「わかってはいたつもりだけれど、勝手に探って勝手にジャッジして気持ち悪いよね。とにかく余計な情報を与えないようにしよう。親にも言っておく」「私も金輪際、関わりたくない」「だいたい『もったいない』ってどういう意味なんだ!」と最後は2人で興奮して一通り愚痴を言って、その日は別れました。

東京に残ることが「成功」なのか

総務省が2026年2月3日に公表した「住民基本台帳人口移動報告 2025年結果」によると、東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)は12万3,534人の転入超過でした。前年より転入超過数は縮小したものの、東京圏への人口集中は続いています。

 

一方、働く場所の選択肢にも変化がみられます。国土交通省が2026年3月24日に公表した「令和7年度テレワーク人口実態調査」によると、雇用型就業者のうち、直近1年間にテレワークを実施した人の割合は16.8%。前年度から1.2ポイント増加しました。ただし、企業による出社回帰の動きもあり、誰もが自由に働く場所を選べるわけではありません。ナオミさんのように、都市部の仕事を続けながら地方に住めるかどうかは、職種や働き方、家族の事情などによっても異なります。

 

かつては、地方から東京の大学へ進学し、そのまま東京で就職することが、ひとつの成功モデルとして捉えられることもありました。しかし、東京に残ることも、地元へ戻ることも、それ自体が人生の成功や失敗を意味するわけではありません。

 

転職や結婚、子育て、家族の事情など、人が住む場所を変える理由はさまざまです。そもそも、他人が思い描いた「華々しい人生」を、本人が歩まなければならない理由はありません。どこで、どのように暮らすか。その選択を他人の期待や価値観で測るべきではないでしょう。

 

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