(※写真はイメージです/PIXTA)
後輩からの指摘で押し黙った「投資はNGで利用はOK」の矛盾
上から目線で語り終わったハヤトさんに対し、少し間を置いて、別の後輩が口を開きました。
「そこまで厳密に投資をしないということは、それらの会社の製品も利用しないってことですか?」
「俺はタバコもギャンブルもやらないし、そもそも軍需産業なんて縁がないからな」
「当然だろ?」といわんばかりのハヤトさんに、その後輩は苦笑いしながら問いかけました。
「でも、ハヤトさん、先週福岡への出張で飛行機に乗りましたよね?」
思いがけない質問にハヤトさんが戸惑っていると、後輩が説明を始めます。日本の航空会社が使う旅客機のほとんどは、米国のボーイング社か欧州のエアバス社製です。そして両社はいずれも戦闘機などの兵器を造る軍需産業の企業でもあります。つまりハヤトさんは、軍需産業が製造した航空機を自ら利用して移動していたわけです。
それだけではありません。アメリカと戦争状態にあるイランは、米軍を支える企業群として18社を名指しで攻撃対象としていますが、そのなかにはGoogleやApple、Microsoftやメタ、エヌビディアなどのIT関連企業が含まれています。攻撃対象を特定し、精密に誘導するにはこれら企業の製品やサービスが使用されているからです。
「ほんのわずかでも軍需産業に投資しない」という倫理観を徹底するなら、それらの企業の製品やサービスを日常から完全に排除しなければ筋が通りません。しかし、いまの日本社会でこれらを使わないで暮らすことは、仕事を含め制約が大きすぎて不可能でしょう。そもそも、現代の戦争は、兵器を組みたてている軍需企業だけでなく、数多の部品やIT技術から物流まで幅広い企業が関わっているわけではないのです。
論理の矛盾を突かれたハヤトさんは、押し黙ってしまいました。
「意識高い系」が陥りがちな罠
実のところハヤトさんの発言は、ネットで見つけたセミナーで講師のFPが話していた内容の受け売りにすぎませんでした。その講師が語る「いかにもな正論」を真に受けてよく調べもせず、すっかり感化されてしまったのです。
そして、それをきっかけに投資した「社会に役立つ素晴らしい会社だけを選んだ」ファンドのリターンは、彼が否定したオルカンの数十倍の手数料にもかかわらず、大きく劣っています。耳障りのよい正論に感化され、他人の投資方法を人格否定まがいの言葉で批判したハヤトさんでしたが、周囲の反応は「いつものことだね(苦笑)」と冷ややかです。本人はシゴデキを自負していましたが、普段の仕事でも同じように、発言だけは立派な「意識高い系の口だけ番長」と評されています。
仕事でも、投資でも意識が高いこと自体は悪いことではありません。しかし、自分自身で背景を深掘りすることもなく、表面的なところだけを見て正論を振りかざすと、周囲からは残念な人として距離を置かれてしまいます。なにより、そういった人は実績で劣るアクティブファンドを売る金融機関や、商売のネタを探している金融セールスのいいカモになる可能性が高くなります。
ハヤトさんのような人はどの職場にも一人二人はいるものですが、彼らに感化されて耳障りのよい話のカモにならないように気をつけたいものです。
凡人投資家Gekko(ゲッコー)
サラリーマン兼業個人投資家
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