教育にかかる費用は、公立か私立かによって大きく異なります。文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」の訂正版によると、1年間の学習費総額は、公立中学校が約54万円なのに対し、私立中学校は約156万円。高校でも公立が約60万円、私立が約118万円です。中学受験から娘の教育に多くのお金をかけてきた48歳女性。ところが、地方で公立中高に通った甥が娘と同じ大学に合格したことで、姉に対する思わぬ感情があふれ出しました。
「お姉ちゃんの家はコスパが良すぎる…」中高6年私立に娘を通わせた世帯年収1,400万円の妹。甥が「同じ大学」に進学し、やりきれなくなったワケ ※写真はイメージです/PIXTA

「そんなの知らないよ!」姉にぶつけてしまった本音

大学進学を機に、甥は岐阜から東京へ出て一人暮らしをすることになりました。すると姉から、「どの沿線が便利?」「どこに住めばいい?」「家賃はいくらくらい?」と相談が相次ぐようになります。

 

東京に長く暮らす妹の自分を頼っているだけ。そうわかっていても、マユミさんは次第にイライラするようになりました。そしてある日、また住まいについて尋ねられ、つい言ってしまいます。

 

「そんなの知らないよ! 自分で調べればいいじゃん」

 

姉は驚き、「どうしたの? 何かあった?」と聞いてきました。

 

そこでマユミさんは、これまで抱えていた思いを吐き出しました。

 

「お姉ちゃん、ズルいって思ってた」

 

自分は娘の教育費を払うために必死で働いてきた。姉は公立中心で、義実家の援助もある。それなのに子どもたちは同じ大学。さらに、昔から姉にコンプレックスがあったことまで口にしました。

 

「お姉ちゃんは昔から頭がよくて、私よりずっと偏差値の高い公立高校に行って、大学も国立。私は要領も悪かったし、勉強もできなかった。なんか悔しくなっちゃった」

「あんたは一生懸命だったじゃない」

姉はしばらく黙ったあと、こう返したそうです。

 

「あんたは確かに要領が悪かったかもしれない。でも、一生懸命だったじゃない」

 

地元を離れて東京で働き続け、自分の家庭を築いたことも「すごいことだと思っている」と言われました。

 

さらに姉は、意外な話をしました。甥はマユミさんの娘から、「一人暮らしならこの辺が便利だよ」「この路線なら大学に行きやすいよ」などと、東京での生活についていろいろ教えてもらっていたのです。

 

「優しい子に育ったよね。私は、あんたの教育の賜物だと思ったよ」

 

マユミさんは、その言葉に涙が出たといいます。

 

「私は教育費ばかり比べていた。でも姉は、娘がどういう人に育ったかを見てくれていたんですよね」

教育費は「同じ大学だったから同じ」ではない

公立か私立かによる負担の違いは、確かに小さくありません。しかし、教育にかかったお金を、最終的な進学先だけで「得だった」「損だった」と判断することも難しいでしょう。マユミさんの娘が私立中高で過ごした6年間には、授業だけでなく、友人関係や部活動、学校行事などさまざまな経験があります。一方、姉一家にもこれから別の負担があります。

 

日本学生支援機構「令和4年度学生生活調査」によると、大学学部昼間部の学生生活費は、自宅通学が年間平均約164万円なのに対し、下宿やアパートなどでは約212万円。自宅外通学では年間約48万円高くなっています。

 

岐阜から上京する甥にも、住居費や生活費が必要になります。どの家庭がお金をかけずに「得をした」のかは、簡単には比べられません。

 

「姉がズルかったわけじゃないんですよね。私がずっと頑張ってきて、疲れていたんだと思います」

 

姉妹はその後、以前のように話せるようになりました。マユミさんも甥の部屋探しについて、娘と一緒に相談に乗っているそうです。

 

子どもにかけた教育費の価値は、最後に並んだ大学名だけでは測れません。どんな環境で何を経験し、どんな人に育ったのか――。姉の言葉は、長年必死に働いてきたマユミさんに、自分が娘に残してきたものを別の角度から見せてくれたのでした。