老後に備えて、できるだけお金を使わず、貯蓄を守る。そんな考え方は決して珍しくありません。まとまった資金があれば安心感もありますが、人生の後半では「貯めたお金を、いつ、何のために使うのか」も重要になります。ある夫婦の事例から、老後におけるお金との向き合い方を考えます。
「老後資金、何のために貯めたんだろう」 年金月25万円・貯蓄2,600万円、70代夫婦、質素倹約の先に待っていた後悔の日々 ※写真はイメージです/PIXTA

貯めるだけでなく「いつ使うか」も考える

高齢期の生活では、支出を抑えることだけが正解とは限りません。茂さんが後悔しているのは、「お金を使わなかったことより、使える時期に使わなかったこと」だといいます。子どもからも、「もっと自分たちのために使ったほうがいいよ」と言われたそうです。

 

その後、茂さんは、毎月の年金から生活費を支払ったあと、一定額を「使うお金」として別にすることにしました。その結果、洋子さんとの外食も増えました。遠方への旅行は大変ですが、近場の温泉や日帰りの観光を楽しむようになりました。

 

「老後資金を使い切ろう、というわけではない。病気や介護のためのお金は必要です。ただ我慢だけして後悔するのは違うなと思いました」

 

金融経済教育推進機構『家計の金融行動に関する世論調査2025年(二人以上世帯調査)』によると、70代(金融資産保有世帯)の平均金融資産保有額は2,714万円(中央値1,495万円)です。また、金融資産の保有目的は「老後の生活資金」(71.3%)や「病気や不時の災害への備え」(59.2%)が上位を占める一方、「旅行、レジャーの資金」は21.9%にとどまります。

 

老後リスクへの備えは不可欠ですが、過度な節約で健康に楽しめる時期を逃しては本末転倒です。貯めること自体を目的とせず、元気に使える時期を見極めた計画的な「お金の使い方」を意識することが、後悔のない老後生活につながります。