相続では、法律上の権利だけでなく、家族それぞれの事情が分割方法を左右します。ところが、相続人ではない親族が話し合いに加わることで、思わぬ対立が生まれることもあります。ある家族の事例から、争族を避けるために知っておきたいポイントを見ていきます。
「ふざけるな!」 42歳長男が大激怒…71歳父逝去、遺産「5,800万円」の相続会議が修羅場と化した、長女の夫の「失礼すぎるひと言」 ※写真はイメージです/PIXTA

「実家は兄がもらえばいい」から始まった相続の話

1年ほどの闘病生活の末、父・加藤博さん(71歳・仮名)が亡くなりました。家族は妻の恵子さん(68歳・仮名)、長男の大介さん(42歳・仮名)、長女の愛さん(39歳・仮名)です。

 

家計管理は博さんが担っていたため、家族は詳しい資産状況を把握していませんでした。ところが相続財産を整理すると、預貯金約400万円、株式約3,100万円、自宅の土地と建物約2,300万円。合計すると約5,800万円ありました。

 

金融経済教育推進機構『家計の金融行動に関する世論調査(二人以上世帯調査)2025年』によると、70代世帯(金融資産保有世帯)の金融資産保有額は平均2,714万円、中央値は1,495万円です。博さんの金融資産(預貯金と株式の合計3,500万円)は同年代の平均値を上回る規模でした。

 

「こんなに残してくれていたんだね」

 

問題は自宅です。恵子さんは、この家を離れるつもりがありません。大介さんは実家から車で20分ほどの場所に住み、両親の通院や買い物を手伝っていました。そこで家族は、母が住み続けることを前提に、大介さんが自宅を相続し、ほかの財産で調整する案を考えました。

 

愛さんも反対しませんでした。ところが帰宅後、夫の拓也さん(41歳・仮名)に相続の話をすると、待ったをかけられます。

 

「ちょっと待って。家が2,300万円なら、兄さんがもらった時点で、かなり有利じゃない?」

「でも、お母さんが住む家だから……」

「売って現金にしたほうがいい。そうすれば、誰がいくら受け取るのか、はっきりするから」

 

数日後、4人が実家に集まりました。拓也さんも遺産分割の話し合いに同席します。開口一番「僕は、この家は売ったほうがいいと思います」と拓也さん。「母さんはここに住みたいと言っている」と伝えても譲りません。

 

「もちろん、お義母さんの気持ちはわかります。でも、家を残すことで、あとから兄さんと愛の間で揉める可能性もあります」

 

ここまでは、家族の将来を考えた意見とも受け取れました。

 

しかし、拓也さんが続けたひと言で空気が変わります。

 

「それに、お義母さんも、いつまでここに住めるかわからないでしょう」

 

恵子さんは黙りました。愛さんは「それは言いすぎじゃない?」とたしなめます。しかし拓也さんは「いや、現実的な話をしているだけだよ」と話を続けようとします。そこで大介さんが口を開きました。

 

「ふざけるな! これは俺たち家族の相続の話だ。余計な口を挟むなら出てけ!」