「親の生活が苦しいなら、子どもが支えなければ」と、仕送りを続ける人は少なくありません。そのようななか「もう仕送りはいらない」という親には、どのような事情があるのでしょうか。ある親子の事例から、高齢期における親子のお金のやり取りについて考えます。
「もうお金は送らなくていい」年金月12万円・74歳父が突然「月4万円の仕送り」を拒否。46歳娘「無理しないで」と心配するも電話では埒が明かず…実家に乗り込んだ結果 ※写真はイメージです/PIXTA

実家で知った「もう送らなくていい」の本当の理由

実家に着くと、茂さんは驚いた様子。しかし家の中は特に変わった様子はありませんでした。食卓に座った智子さんは、改めて尋ねました。

 

「本当に、仕送りいらないの?」

 

すると茂さんは、少し間を置いて答えました。

 

「うん。もう大丈夫だから」

 

そこで父が見せてきたのが、証券会社から届いた書類でした。茂さんは現役時代、まだ株式投資が今ほど身近ではなかったころから、少額の株を買っていたときがあったといいます。きっかけは知人に勧められたこと。最初から大きな利益を狙っていたわけではありません。

 

その後、仕事や家庭のことで忙しくなり、株を頻繁に売買することもなくなりました。一時は、保有していることも忘れていたそうです。ところが近年、国内株式市場では株価の上昇が続き、保有していた株の評価額も大きく膨らんでいました。

 

「いつの間にかすごい上がってな。いい機会だから、全部売ったんだ」

 

そして手元には、預貯金が3,000万円ほどあるといいます。

 

「当時は、50万円ほどだったと記憶していたが……」

 

あまりのことに驚きっぱなしの智子さん。「すごい」という言葉以外見つかりません。しばらくして「そういうことなら、言ってくれたらよかったのに」と理解が追いついたといいます。

 

「何か騙されているのではと、心配するかと思って……すまないな」

「今までありがとう、助かったよ。でも、もう大丈夫。これで、少しはお前たちにも残せると思うから」

 

金融経済教育推進機構『家計の金融行動に関する世論調査2025(二人以上世帯)』によると、70代の金融資産保有額(資産保有世帯)は平均2,309万円(中央値1,050万円)で、その44.3%が株式を保有しています。また、1年前より資産が増加した70代世帯の50.0%が「株価等の上昇」を理由に挙げています。

 

高齢者世帯の資産状況を見る際、年金収入だけでは実態を捉えきれません。長年保有してきた株式や預貯金など、現役時代から積み上げてきた金融資産を持つ世帯も珍しくないでしょう。親の老後を家族で考えるなら、収入だけでなく、資産も含めて現状を知っておく必要がありそうです。