夫婦で暮らしている間は、家計をどちらか一方に任せている家庭も珍しくありません。しかし、配偶者を亡くしたあともお金の管理ができなければ、生活は行き詰まります。生活苦から子どもを頼りにしていたある男性のケースから、老後の家計管理について考えます。
「もう、かばいきれません」息子から絶縁LINE…〈年金月12万円〉72歳、それでも「やめられなかった」こと ※写真はイメージです/PIXTA

「自分の楽しみは続けるのに」と息子が限界に

健太さんも、最初は父親を助けました。自分にも住宅費や子どもの教育費があります。それでも、父親が困っているなら仕方がないと思っていたのです。

 

しかし、気になることがありました。父親は家計を把握していない。その一方で、競馬やパチンコは続けていました。

 

「まず、毎月いくら使っているか確認してよ。競馬もパチンコもやめなよ」

 

健太さんがそう言うと、茂さんは答えました。

 

「競馬っていっても、趣味だよ。パチンコもそう。そんなに使ってない」

 

健太さんが問題にしていたのは、競馬やパチンコだから、というわけではありません。自分の収入と支出を確認しないまま、足りなくなれば息子に頼る。しかし、趣味のお金は節約しない――その姿勢でした。

 

ある月、また生活費が足りなくなりました。茂さんは健太さんに連絡します。

 

「悪いけど、今月も少し頼めないか」

 

それに対して届いたのが、冒頭のLINEでした。茂さんには、「親子なのだから、困ったときは助けてもらえる」という思いがありました。一方、健太さんは家族のために働き、ほぼ自由になるお金はありません。自分の楽しみは二の次です。それなのに、父親は金銭的なサポートを受けながらも、趣味を我慢することはありませんでした。

 

「父が困っているなら助けたい。でも、人からお金を借りる前に、自分で何に使っているかも分からないまま、というのはない。ましてや、人からお金を借りているのに、唯一の趣味だからと、パチンコをやめないのも意味がわかりません」

 

それが健太さんの本音でした。絶縁のLINEをもらっても、茂さんは「なんて薄情な奴だ」と怒りをあらわにしていたそうです。

 

内閣府『令和6年度 高齢社会対策総合調査(高齢者の経済生活に関する調査)』によると、高齢者の61.2%が毎月平均6.8万円の預貯金を取り崩して暮らしており、57.1%の人が「貯蓄が足りない」と感じています。

 

お金に困ったとき、6割以上の人が「家族や親族」を頼りにしますが、家計状況があいまいなまま援助を求めると、思わぬトラブルに発展しかねません。

 

老後を安心して暮らすためには、趣味などのゆとり費も含めて収支を「見える化」し、まずは自分で家計を把握・管理する意識を持つことが大切です。