趣味の集まりや日常の人間関係など、安心感のあるコミュニティを通じて持ちかけられる「うまい話」は、警戒心が薄れやすく大きな被害へ発展しがちです。事例を見ていきましょう。※事例の登場人物はすべて仮名です。
な、なんてことをしたんだ…月収90万円の42歳会社員夫、膝から崩れ落ちる。泣きじゃくる40歳パート妻。娘の教育費500万円がパーに、きっかけは「妻の習い事デビュー」 (※写真はイメージです/PIXTA)

習い事を始めたきっかけ

都内の中堅企業で役員手前のポジションに就き、月収約90万円を得ている会社員のトシオさん(42歳)。一見すると経済的に恵まれた家庭ですが、現在、トシオさんの家の寝室は重苦しい空気に包まれています。

 

妻のハルミさん(40歳)とは学生時代に結婚。ハルミさんは一度も就職することなく専業主婦となり、二人の子ども(現在ともに高校生)の育児と家事を一手に担ってきました。

 

転機が訪れたのは2年前のことでした。ハルミさんが実家時代から飼っていた愛犬が19歳で老衰し、ハルミさんは付きっきりの介護に心身を捧げていましたが、やがて愛犬が旅立ってしまうと、心にぽっかりと大きな穴が開いてしまったのです。

 

「このまま家に引きこもっていてはいけない」と考えたハルミさんは、社会との接点を持つためにパート勤務を始めることにしました。自分のお小遣いができたことで、以前から興味のあったダンス教室にも通いはじめます。暗かった表情が日に日に明るくなっていく様子を見て、夫のトシオさんも「犬が亡くなったときはどうなることかと心配したが、すっかり表情も明るくなってよかった」と心から喜んでいました。

 

しかし、そのダンス教室での新たな出会いが、悲劇の始まりでした。

 

ダンス教室で知り合った同年代のなかに、いつもブランド服を着てきてバリキャリ風の装いをしている自称・大手証券会社勤務の女性がいました。その女性は人当たりがよく、ハルミさんを含むダンス仲間数名を巧みに誘い、「未公開のプライベートファンドで確実に高利回りが狙える投資案件がある」と持ちかけてきたのです。

 

これまで社会経験がなく、投資を含めた金融の知識も一切なかったハルミさん。「あの人がいうなら間違いない」「ダンス仲間のAさんも出資したから大丈夫」と思い込み、自分も利益を出して家族を喜ばせたいという焦りから、参加を決めてしまいました。その女性は「私に任せれば大丈夫だからね」「絶対損させないから」「ハルミさんにだから教えてあげるんだからね」としきりにいってきたそうです。

 

ハルミさんが投資資金として活用したのは、子どもたちの大学進学費用として積み立てていた学資保険でした。慎重派で冒険心のない夫に相談すれば止められると思い、無断で解約して500万円を一括で振り込んでしまったのです。

 

しかし数ヵ月後、そのファンドとの連絡が突然途絶えました。配当金が支払われないどころか、自称・証券会社勤務の女性もダンス教室を突然退会して姿を消してしまったのです。

 

ハルミさんから事実を打ち明けられたトシオさんは、「な、なんてことをしてくれたんだ……」とその場に膝から崩れ落ち、頭を抱えました。横ではハルミさんが「ごめんなさい、ごめんなさい」と声を上げて泣きじゃくるばかり。子どもの進学直前に突如として訪れた500万円の損失によって世帯の将来計画は崩れることとなりました。