(※写真はイメージです/PIXTA)
孫と過ごした連休、心の中に残った激しい虚無感
「いま思えば、喜んでほしくてやってきたことすべてが勘違いだったのかもしれません」
月16万円の公的年金をもらいながら一人暮らしを送るサトコさん(66歳)は、深いため息をつきました。夫は1年前に亡くなり、その際に生命保険金として800万円を受け取りました。ほかにも夫が遺してくれた蓄えがいくらかあります。
連休を終えて孫が帰ったサトコさんの自宅には、強い虚無感だけが漂っていました。
きっかけは3年前のこと。小学6年生になった息子夫婦の娘であるナルちゃんが、人気男性アイドルグループに夢中だと知ったサトコさん。サトコさん自身も、若かりしころにアイドルにハマった経験があり、ナルちゃんの喜ぶ顔が見たくてフリマサイトなどを自分で調べては、「学生のナルちゃんにはお小遣いも限られているから」と限定グッズを探してプレゼントしました。
そのうちにサトコさん自身もそのアイドルグループにはまり、ファンミーティングやライブに足を運ぶほどに。ナルちゃんから「ばぁば、私もライブに行ってみたいな」と頼まれ、サトコさんは大喜びで2人分のチケットを取ったこともあります。同じ趣味を共有できているという実感が、なによりの喜びだったのです。
ある連休の際、サトコさんは息子夫婦が夫婦水入らずで旅行に行きたいというので、ナルちゃんを自宅で預かることにしました。今回のナルちゃんの滞在中には、次回のライブの当落発表があります。
サトコさんは「今度こそ二人でライブに行こうね」と、二人分のチケットが当たるのを心待ちにしていました。しかし当落発表の日、サトコさんの名義で申し込んだ分はあいにく落選。「ばぁば外れちゃった……」と伝えると、ナルちゃんは「そっか、残念だったね」と頷いていました。
ところが翌日、リビングの隣の部屋でナルちゃんが友達と嬉しそうに電話で話している声が、偶然サトコさんの耳に飛び込んできました。
「ばぁばの分は落ちたから二人で行けるよ! 当たってマジよかった〜」
一瞬間を置いて、サトコさんは言葉の意味を理解しました。サトコさんの視線に気がついたナルちゃんは、電話を切ると、気まずそうに視線を泳がせ、ボソッと呟きました。
「だって、ばぁばと行っても周りと浮くし、友達と行くほうが楽しいから……」
二人で並んでライブを楽しむ姿を夢見て、推しの情報を共有し、グッズを買い与えてきたサトコさん。その純粋な思いが、孫にとっては単なる「都合のいいチケット要員」扱いに過ぎなかったという現実が露呈したのです。
ナルちゃんの帰宅後、旅行から帰宅した息子から娘を預かってくれたお礼の電話が入ります。サトコさんがナルちゃんとの推し活について触れてみると、「ナル、お母さんのこと『あんなに必死になっちゃって、だいぶイタいよね』って笑ってたよ」と笑いながらいいます。
14年間かわいがってきた孫のために、ここ3年間はグッズを買い集めてきた日々。年金16万円の決して余裕のない暮らしから捻出してきた時間とお金、そして注いできた情愛が、裏では冷笑の対象にされていたという事実。誰もいない静かな部屋で深い徒労感に包まれたサトコさんは、静かに心を決めました。
「孫に会うのは、もうやめることにしました。喜ばせたい一心で尽くしてきたけれど、いままでの距離感の限界を悟りました。これからは孫との付き合い方を見直し、過剰に関わるのは卒業します」