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「長生きするほど得だから」と夫婦そろって繰下げを選んだのに…
愛知県在住の高橋恵子さん(仮名・68歳、昭和33年2月生まれ)は、夫の誠さん(仮名・享年72歳、昭和29年2月生まれ)を心筋梗塞で突然亡くしました。令和8年2月3日、誠さんが72歳の誕生日を迎えたばかりのことでした。
誠さんはメーカーに勤め、厚生年金に38年間加入。65歳から本来どおり受け取れば、老齢厚生年金(報酬比例部分)が年120万円、老齢基礎年金が年80万円、合計年200万円の年金が支給されるはずでした。しかし退職金と貯蓄で当面の生活は賄えることから、夫婦で話し合い、老齢年金の「繰下げ受給」を選んでいたのです。
繰下げ受給とは、年金を受け取り始める時期を本来の65歳より後ろにずらし、その分増えた年金を生涯受け取れる制度です。
・65歳以降、1年以上受け取りを遅らせると年金が増える
・増額率は1か月あたり0.7%(70歳まで待てば42%、75歳まで待てば84%の増額)
・令和4年4月から、繰下げられる年齢の上限が70歳から75歳に引き上げられた
・老齢基礎年金と老齢厚生年金は、別々に繰下げることができる
「長生きするほど得になる。どうせなら75歳まで待とう」
そう言って誠さんは、61歳から65歳まで特別支給の老齢厚生年金を受け取ったのち、65歳の誕生月に日本年金機構から届いた年金請求書(ハガキ)を返送せず、65歳以降の年金を1円も受け取らずに待っていました。
仮に72歳0か月まで繰下げていれば増額率は58.8%。年間300万円を超える年金を受け取れる計算です。
一方、恵子さんも結婚前に8年ほど会社勤めをしており、老齢厚生年金が年約20万円、老齢基礎年金が年間で約80万円あります。夫にならって、自分の年金も繰下げて待っている最中でした。
「夫は7年間、年金を受け取るのをずっと我慢してきました。増えた分の年金は、私がまとめて受け取れるんですよね? それと、私の年金もこのまま繰下げを続けたほうがいいのでしょうか」
夫の死後に届いた書類を手に、恵子さんは筆者のもとを訪れました。しかし結論から申し上げますと、誠さんが7年間待ち続けた年金は、繰下げによる増額が一切反映されず、しかも一部は時効で消えてしまいます。そして恵子さんご自身の年金は、「このまま繰下げを続ける」のが正解ではありませんでした。