老後のために貯めたお金は、できるだけ子どもに残す――そんな考え方は今も根強くあります。一方で、資産を相続財産として残すのではなく、自分たちの暮らしに使うという夫婦もいます。「子どもには残さない」と決めたある夫婦から、老後のお金の使い方を考えていきます。
「子どもに1円も残しません」〈資産4,200万円・年金月28万円〉70代夫婦、老後になって「お金は自分たちで使う」と決めたワケ ※写真はイメージです/PIXTA

「残すためのお金」から「使うためのお金」へ

旅行を重ねるうちに、茂さんの中でも少しずつ意識が変わりました。

 

お金を使うたびに罪悪感を持つ必要はない。老後の生活に必要な分を確保したうえで、残った資産を自分たちのために使ってもいい――現在は、住み替えも検討しています。今の家は夫婦2人には広く、2階はほとんど使っていません。駅からも距離があるため、今後の身体のことを考えると、生活しやすい場所に移る選択肢も出てきました。

 

もちろん、貯蓄を使い切ろうと考えているわけではありません。病気や介護に備える資金は確保します。どちらか一人になった場合の生活費も必要です。そのうえで「自分たちのために使う」ことに対して、罪悪感を抱くのをやめたのです。

 

国税庁『相続税の申告事績の概要』によると、2024年分の相続税の課税割合は10.4%でした。相続財産があっても、すべてのケースで相続税がかかるわけではありません。老後資産を考える際には、いくら子どもに残すかだけでなく、自分たちの生活にいくら必要なのかを考えることも重要です。

 

「子どもにはお金は残しません」

 

ただし、それは子どもに財産を渡したくないという意味ではありません。困っていても絶対助けない、というわけでもありません。ただ、万一のことを考えて、自分たちが我慢する必要はないと思うようになったのです。

 

「ずっと『親なら、子どもに何か残してあげるもの』と考えていました。私たちも親に遺してもらったので。ただ今の時代は、親は親、子は子、なんですね」