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「1,000万円出す」義母が口を出し始めた
東京都内で会社員として働く41歳の伊藤彩さん(仮名)は、夫と小学6年生の長男の3人で暮らしています。夫婦の世帯年収は920万円。住宅ローンや生活費を支払いながら、中学受験を控えた長男の教育費も準備してきました。
そこに義母の伊藤恵子さん(69歳・仮名)から、思いがけない申し出がありました。
「孫の教育費に1,000万円出すわ」
恵子さんの資産は3,200万円。年金は月18万円ほどだといいます。夫を亡くし、現在は地方の持ち家で1人暮らしをしています。
高齢女性1人には、十分すぎる経済状況。とはいえ、何があるかわからないなか、どれだけお金があっても不安がゼロになるわけではありません。それでも「孫の教育費なら」と、1,000万円もの援助を申し出たのは、「かわいい孫のため」という純粋な気持ちからでした。
彩さんにとっても、ありがたい話。受験を終えてからも、高校、大学と教育費は続きます。1,000万円あれば、家計の負担は大きく減ります。
文部科学省『令和5年度子供の学習費調査』によると、中学生1人当たりの年間学習費総額は公立で約54万2,000円、私立では約2.9倍の約156万円に上ります。内訳を見ると、私立中学は授業料などの「学校教育費」が約112万8,000円(構成比72.3%)と大半を占め、公立中学でも塾代などの「学校外活動費」が約35万6,000円(同65.6%)に達します。続く高校(全日制)の年間学習費も公立で約59万7,000円、私立で約117万9,000円かかり、大学進学まで含めると教育費は長期にわたり家計を圧迫します。こうした実態を踏まえると、1,000万円という援助が家計の負担軽減に与えるインパクトの大きさがよく分かります。
ところが、援助の話が具体的になるにつれて、恵子さんの言葉が変わっていきました。
「中学はここがいいんじゃない?」
「塾は今のところより、こっちのほうが実績がある」
「受験するなら、もっと勉強する時間を増やしたほうがいい」
彩さんが気になったのは、意見の内容だけではありません。長男本人の希望や、夫婦で決めてきた方針についても、義母が口を出すようになったことでした。
さらに、長男がゲームをしていると、「受験生なのだから、もう少し考えたほうがいい」と注意するようになりました。
夫の健太さん(43歳・仮名)は、母親の申し出を断りきれません。
「1,000万円も出してくれるんだから、多少は仕方ないんじゃないか」
しかし、彩さんには、その「多少」がどこまで広がるのか不安でたまりませんでした。
志望校を決めるのは誰なのか。
塾を選ぶのは誰なのか。
子どもの生活時間を決めるのは誰なのか。
教育資金を受け取ることで、義母がすべてに口出しをする――そんな危機感を覚えたのです。