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「すべてを抱え込む介護」がもたらす破綻と自己犠牲の限界
「自分が頑張れば妻も助かり、義母の願いも叶うと思い込んでいました」
しかし、睡眠時間が削られ、休日のない生活が続くうちに誠さんの体力は限界を迎えていました。職場で深刻な記載ミスを起こし、社内での信用を失う事態にまで発展します。
施設に入所させて負担を減らす選択肢も検討しましたが、初枝さんは拒否。そもそも月10万円の年金収入では月額数十万円かかる民間介護施設への入居費用を賄えません。在宅でのフルサービス利用にも限界があり、自己負担分が増加したことで、木村さん夫婦の貯蓄も着実に減少していきました。
総務省『2022年 就業構造基本調査』によると、過去1年間に介護や看護を理由に前職を離職した「介護離職者」の数は年間約10.6万人に上ります。このうち男性は約2.4万人を占めており、働き盛りの世代が介護を理由に離職やキャリア断念を余儀なくされている実態が示されています。
適切な公的支援制度や介護サービスに繋がらないまま個人で問題を抱え込み、自身の経済的基盤や健康を失う事例は少なくありません。ケアマネジャーや専門機関との十分な連携不足が、家族介護者の孤立化を深める背景として指摘されています。
限界を超えて働き続けていた誠さんは、ある日の通勤途中に駅のホームで倒れ、救急搬送されました。診断結果は重度の適応障害と過労でした。
「休職を余儀なくされ、自分の収入が絶たれれば全員が共倒れになると気づき、強い恐怖を覚えました」
この出来事をきっかけに、誠さん夫婦は地元の地域包括支援センターに相談。ケアマネジャーの助言のもと、義母の「家を離れたくない」という意思よりも安全確保を優先し、要介護度の区分変更申請を行いました。そして、公的ケアの利用枠を拡大しつつ、特別養護老人ホームへの入所手続きを進めることになりました。
親や義親の介護が発生した際、自身の仕事や生活基盤、健康をすべて犠牲にして一人で抱え込むことは、決して褒められたことではありません。自身の生活(仕事・年金・健康)を維持しながら、専門機関や公的サービスを適切に活用して両立を図る視点が不可欠です。