定年後の暮らしを支える年金収入。しかし、近年の金利上昇に伴い、住宅ローンの返済負担が重くのしかかる高齢世帯が増えています。返済が滞ると、どのような事態が待ち受けているのでしょうか。ある高齢夫婦の事例から、住宅ローンの滞納リスクについてみていきます。
「死ねというのか…」〈年金月24万円〉67歳夫婦、住宅ローン〈70歳完済予定〉のはずが、銀行から届いた「1通の赤い封筒」の絶望的な中身 ※写真はイメージです/PIXTA

「期限の利益」を失う前に、相談できることがある

封筒を開けた八木さんが目にしたのは、「期限の利益喪失」に関する通知でした。

 

「死ねというのか……」

 

これまでのように毎月分割して返済する権利を失えば、残った住宅ローンについて一括返済を求められる可能性があります。住宅ローン契約では、一定期間の延滞などを条件として、期限の利益を失う条項が設けられている場合があるためです。

 

ただし、通知が届いたからといって、その時点で直ちに自宅が競売にかけられるわけではありません。競売は、債権者が裁判所に申し立て、担保となっている不動産を売却して債権を回収する手続きです。だからこそ、返済が苦しくなった段階で金融機関へ相談することが重要になります。

 

返済期間や返済条件の変更が可能かどうかを相談できる場合があります。また、自宅を売却して住宅ローンを整理する「任意売却」という選択肢が検討されるケースも少なくありません。

 

住宅金融支援機構の2026年1月調査では、住宅ローン利用者の75.0%が変動金利型を利用していました。金利上昇が家計に与える影響を無視できない環境になっています。

 

八木さんのように、ローン残高が大きくなくても、年金生活に入ってから医療費や介護費が増えれば、返済計画は崩れてしまいます。

 

「70歳で終わるから大丈夫」ではなく、病気や介護で毎月の支出が増えた場合にも返済できるのか。

 

老後に住宅ローンを残すなら、完済年齢だけでなく、手取り収入と毎月の支出、そして手元に残すべき資金まで含めて考える必要があります。