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「あてにして当然」という歪んだ期待が招く家族崩壊
「えっ、たったの100万円? これじゃ初年度の学費分にもならないわ」
「仕方ないだろ。でも、親父はまだ定期預金を持っているはずだ。毎月の家賃と仕送りは少しずつ出してもらおう。そもそも親父の援助を計算に入れて受験させたんだからな」
健太さんと真由美さんの口から漏れたのは、感謝とは程遠い本音でした。自分たちの家計だけでは学費を賄えないと知りながら、「足りない分は祖父に出させればいい」と安易に考えていたことが発覚したのです。
親としての経済的責任を放棄し、最初から祖父母の財布をあてにした無計画な進学でした。清一さんの好意は省みられず、単なる「あてにできる財源」として計算されていたに過ぎません。
さらに清一さんは、孫である翔太さんにも疑念を募らせていきます。今、この場に翔太さんはいません。当初、親と一緒に来る予定が、友人との約束を優先してドタキャン。そもそも翔太さんが連絡を入れてくるのは、小遣いや高額な買い物をねだるときばかり――。
内閣府『令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査』によると、同居・別居にかかわらず子や孫の生活費を負担している(「ほとんど負担している」「一部を負担している」の合計)高齢者の割合は25.2%。一方で、自身の今後の生活の備えとして「貯蓄が足りない」と感じている人は57.1%に上り、実際に61.2%の人が毎月平均約6万8,000円の預貯金を取り崩して生活費に充てているのが現状です。
子や孫への援助を行う高齢者は少なくありませんが、自身の老後資産に十分な余裕がない中で過度な支援を続けた結果、親世代自らが経済困窮に陥ってしまうことも懸念されています。
そもそも100万円は、自身の病気など万一の備えとして残していた貴重な資金です。「親や祖父母が援助するのは当たり前だ」という身勝手な態度に対し、清一さんの怒りは頂点に達しました。
息子夫婦が帰る際、清一さんは「さっき話していたこと、聞こえていたぞ」と明かしました。まさか聞かれたとは思わなかったのでしょう、動揺を隠しきれない二人に対し、「もう二度と連絡してくるな!」と吐き捨て、夫婦を追い出しました。
「年寄りが子や孫のためにお金を包む――こちらとしては当然の気持ちですよ。でも、“援助されて当たり前”という、歪んだ期待を持たれては困ります。心からの感謝だけで十分なのに」
また、子や孫への援助は際限なく膨らみがちです。高齢期に老後資金を守るためには、子世代からの過度な要求に対して毅然とした態度で拒絶を示すことも大切です。