超高齢社会の日本において、高齢夫婦が支え合う「老老介護」や両者が認知症を患う「認認介護」の破綻が深刻化しています。親の「大丈夫」という言葉を信じ、異変に気づけない子世代も少なくありません。ある家族の事例を通じて、適切な介護支援へつなげるためのポイントを考えます。
「お願い、誰か助けて!」〈年金月15万円〉81歳母からの深夜の悲鳴。駆けつけた51歳長女が目撃した「あまりに酷な現実」 ※写真はイメージです/PIXTA

介護破綻を防ぐための初期対応と介護サービスへのアクセス

恵美さんはその日のうちに、実家を管轄する「地域包括支援センター」へ足を運びました。洋子さんはこれまで、「介護保険を使うと近所に知られて恥ずかしい」「まだ2人で暮らせる」と考え、外部への相談を拒否していた経緯があります。恵美さんは職員に対し、家庭内の現状と勝さんの症状を説明し、緊急の対応を要請しました。

 

厚生労働省の資料によると、地域包括支援センターはすべての市区町村に設置され、高齢者の総合相談や支援を行っています。しかし介護保険サービスの未利用者やその家族のうち、相談窓口の存在を知りながらも「自分たちで対応できる」「手続きが複雑そうだ」との理由で相談を躊躇する割合が一定数存在します。初期相談の遅れは、介護者の共倒れや過重負荷による事故のリスクを高める要因となります。

 

連絡を受けた地域包括支援センターの職員が同日中に実家を訪問し、要介護認定の緊急申請手続きが始まりました。勝さんは提携医療機関を受診し、アルツハイマー型認知症との診断を受けます。その後、勝さんは安全確保のためにショートステイを利用し、特別養護老人ホームへの入所申請が進められました。

 

同時に洋子さんについても要支援認定が行われ、週に数回のデイサービス利用が決まります。栄養状態の改善と生活リズムの調整が行われたことで、洋子さんの表情には落ち着きが戻りました。

 

洋子さんが住む町では、地域包括支援センターが実態把握のために定期訪問を行っていました。そこで異変を察知できなかったのは、応対した洋子さんが「うちは大丈夫です」「元気にしてます」と答えていたからです。

 

恵美さんは今回の件を振り返り、親の「大丈夫」という答えを過信していた自身の対応を反省しています。「電話だけで、親の老いを正確に把握するのは難しいですね」と振り返ります。

 

高齢の親がいる場合、居住状態を直接確認し、何か変わったことがあるなら、早期に公的な相談窓口にアクセスすることが重要です。