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書類の束から出てきた「妻には言えなかったこと」
古い通帳や領収書を整理していると、見慣れない会社名が書かれた書類が出てきました。
投資に関する資料。美智子さんは、夫が投資をしていたことを知りませんでした。
浩二さんは退職後、「せっかくなら、これから2人で少し楽しもう」と話していたそうです。
夫婦で旅行に行く。
外食をする。
家の修繕もする。
そのために、退職金1,500万円の一部を増やせればと考えたようです。
さらに表紙がボロボロになったメモ帳には、日記のようなメモも。そこには、投資に関する一連の出来事が書かれていました。
きっかけは、知人から紹介された投資話だったようです。
「銀行に置いておくより増やせるらしい」
そんな話を聞き、浩二さんはまず100万円ほどを投じました。ところが、その後も追加で資金を入れています。書類には、高い利益が期待できることを示す説明が並んでいました。一方で、実際に利益を受け取った形跡はほとんどありません。
浩二さんも、途中から不安を感じていたのでしょう。メモ帳には、短い言葉が残されていました。
「まだ大丈夫」
「もう少し待つ」
「美智子には言えない」
なぜ相談してくれなかったのか。そう思いましたが、残された書類を調べるうちに、その理由がわかりました。
投資を始めた目的は、妻との老後を少しでも豊かにしたかったから。だからこそ、うまくいっていないとは言えなかったようです。
最初の100万円が戻ってこなくても、「もう少し待てばいい」と考えた。追加でお金を求められても、「ここでやめたら今までの分が無駄になる」と思い詰めたのでしょう。
そして、妻に知られれば止められる。何より、「老後のために増やす」と言って始めた自分が、失敗したとは言い出せない。そんな思いが、浩二さんを一人で抱え込ませたようでした。
警察庁によると、2025年のSNS型投資詐欺は認知件数9,523件、被害額1,288億円に上りました。前年から認知件数は48.5%、被害額は47.9%増えています。「必ずもうかる」「元本保証」などの文言を含む広告も確認されており、身近な投資話に見えても注意が必要です。
またSNS型投資詐欺では、広告やダイレクトメッセージを入口に被害につながるケースが増えています。2025年は広告が3,785件、ダイレクトメッセージが3,549件で、両者を合わせると当初の接触手段の約8割を占めました。誰かに相談する前に、本人が「自分で判断した投資」と思い込んでしまう余地があります。
夫婦だからこそ。心配をかけたくない。反対されたくない。失敗したと思われたくない――そんな気持ちがあったのかもしれません。
「あなたのこと、私、何も知らなかった……」
内閣府『高齢者の経済生活に関する調査(令和6年度)』によると、お金に困った際に「誰かに相談はしない」と答えた高齢者は19.6%、「相談できる相手はいない」と答えた人は14.5%に上ります。
家族や配偶者という身近な存在がいるからこそ、「心配をかけたくない」「失敗を知られたくない」という心理が働き、お金の悩みやトラブルを一人で抱え込んでしまうケースは少なくありません。
老後の大切な資産を守るには、夫婦間であっても日頃から資産の管理状況を共有しておくことや、「おかしいな」と思ったときに二人で第三者機関や公的窓口に相談できるようにしておくことが欠かせません。