「老後の安心」のために購入したマイホーム。しかし、年数が経つにつれて維持費は膨らみ、売却や住み替えも容易ではなくなる現実に直面。かつての「夢の住まい」が、なぜ逃げ場のない負担へと変わってしまうのでしょうか。高齢期に直面する持ち家の維持費高騰と住み替えの壁、その実態をみていきます。
「死ぬまで、ここにいるしかないんだな…」〈年金月15万円〉81歳男性、40年前に買った〈夢の新築マンション〉から「引っ越せない」理由 ※写真はイメージです/PIXTA

売るにも住み替えるにも…「80代単身男性」には高いハードル

「だったら、売って賃貸に移ればいい」

 

最初はそう考えていました。しかし、こちらにも不安があります。

 

81歳になった今、年金は月15万円。家賃を払いながら生活することになります。高齢者、しかも単身で民間賃貸住宅を探す場合、年齢が入居のハードルになることもあります。

 

内閣府『令和7年版高齢社会白書』によると、高齢者の賃貸住宅への入居に対し、賃貸人(大家等)の7割弱(66%)が拒否感を示している実態があります。

 

内訳は「拒否感はあるが従前より弱くなっている」が44%、「変わらず拒否感が強い」が16%などとなっており、高齢単身者にとって賃貸契約時の大きな壁となっています。

 

大家側が懸念する背景には孤独死のリスクもあり、実際に東京23区における65歳以上の単身者の自宅での死亡者数は令和6年に5,302件に達しました。持ち家の維持費に悩み賃貸への移転を希望しても年齢がハードルとなる現状に対し、居住のセーフティネットの強化が急務となっています。

 

「何とか売却できたとしても、家を借りるのが難しい……ここを出て行っても次にどこへ行けばいいのか、決まらないのでは売るに売れない。死ぬまでここにいるしか、ないんです」

 

40年前は夢のマイホームでしたが、今は、引っ越すにも引っ越せない、牢獄のようになっていると佐藤さん。高齢期の持ち家については、購入価格や住宅ローンだけでなく、築年数を重ねたあとの維持費と売却可能性まで見据えて考える必要があります。