年金は自ら請求しなければ受け取れない制度です。このルールを知らず手続きを怠ると、受給権があっても消滅時効により数百万円を失う危険があります。ある男性の事例から、受給手続きに潜む「5年の壁」と、大切な年金をもらい損ねないための注意点をみていきます。
「ふざけるな!」〈年金月14万円〉72歳男性、年金事務所で怒号…「知らなかった」で〈360万円〉を失った悲劇 ※写真はイメージです/PIXTA

年金は「請求」しなければ受け取れない

老齢年金は、受給権が発生すればすべて自動的に支給されるわけではありません。原則として請求手続きが必要です。

 

日本年金機構も、受給開始年齢に達して請求しないまま5年を過ぎると、時効によって受け取れなくなる場合があるとして、早めの請求を呼びかけています。

 

佐々木さんが61歳から65歳までに受け取れたはずの特別支給分は、2025年にはすでに長い年月が経過していました。

 

年金事務所で記録を確認した結果、佐々木さんのケースでは、時効の対象となる可能性が極めて高いと説明されたのです。

 

「案内は送っているはずだと言われました。でも、そんな昔の郵便物なんて残っていません。そもそも、何の書類だったのか覚えていない」

 

佐々木さんは納得できませんでした。

 

「保険料はちゃんと払ってきた。それなのに、申請書を出していなかったという理由だけで、何百万円も受け取れないなんて……ありえないでしょ」

 

ただし、すべてのケースで5年を超えた年金が一律に失われるわけではありません。年金記録の訂正によって本来の年金額が増えた場合や、日本年金機構などの事務処理誤りが認められた場合には、時効に関する特例が適用されることがあります。

 

一方、単に「制度を知らなかった」「請求していなかった」という事情だけでは、救済されないケースがあります。360万円を受け取れなかった可能性に直面した佐々木さんにとって、その確認はあまりにも遅いものとなりました。