※写真はイメージです/PIXTA
運動会の投稿を見つけた嫁が激怒
問題が起きたのは、孫が小学校に入って初めての運動会でした。
息子夫婦から誘われたヒロコさん夫婦は、朝から張り切って応援へ。徒競走をする孫や、友達と並んでいる姿などを何枚も撮影しました。
その日の夜、ヒロコさんは写真を数枚SNSに投稿しました。
孫の顔は小さく写っている程度でしたが、学校の校庭で撮影したことは一目瞭然。さらに投稿文には、「初めての小学校の運動会」と書き込んでいました。
数日後、息子から電話がかかってきました。
声は、明らかに怒っていました。
「母さん、孫の写真、ネットに載せてるの?」
どうやら息子の妻が偶然、ヒロコさんのSNSを見つけたのです。さらに過去の投稿を遡ると、ランドセル姿や近所の公園、誕生日、家族で出かけた場所など、孫の生活がわかる写真が次々と出てきました。
「名前も住んでいる場所もある程度わかるのに、学校まで推測できるような写真を載せないでください」
息子の妻からも強く言われました。
ヒロコさんは、
「でも名前は書いてないし、顔もそんなに大きく写っていないから……」
と説明しました。
すると、息子の妻はさらに語気を強めました。
「そういう問題じゃないです。中には、家庭の事情で居場所を知られたくない子だっているかもしれないんですよ。どうして他人の子どもの写真まで、勝手にネットに載せられるんですか」
ヒロコさんは、そこで初めて言葉に詰まりました。
実名でSNSを利用し、住んでいる地域もある程度わかる状態です。そこに運動会の写真まで加われば、学校や生活圏を推測する材料になりかねません。家庭によっては、DVやストーカー被害など安全上の事情から、居住地や子どもの通学先を知られたくないケースもあります。
しかしヒロコさんは、それまで「孫の写真を載せても大丈夫か」ということばかり考え、写真に写り込んだほかの子どもや、その家族の事情にまで思いが至っていませんでした。
さらに息子の妻は言いました。
「孫を“いいね”をもらうために使わないでください」
その言葉に、ヒロコさんは大きなショックを受けました
「しばらく家にも来ないで」
さらに息子から、
「写真を全部消して。もう勝手に載せないでほしい」
と念を押されました。
そして、しばらく孫に会いに来ることも控えてほしいと言われたのです。
「出禁ですよね。あんなにかわいがってきたのに、どうしてそこまで言われなきゃいけないんだろうって、そのときは腹も立ちました」
しかし、息子の話はSNSだけでは終わりませんでした。
「それと、前から気になっていたんだけど、お金は大丈夫なの?」
ヒロコさんは思わず聞き返しました。
「何のこと?」
「ランドセルもそうだし、毎回ご飯代を出したり、プレゼントを買ったり。俺たちは頼んでないよ。父さんと母さん、自分たちの老後のお金をちゃんと残しておいてよ」
その言葉にヒロコさんは、初めて言葉を失ったといいます。
通帳を見て気づいた「こんなに使っていたんだ」
その日の夜、ヒロコさんは久しぶりに家計を確認しました。
夫婦の年金は月22万円ほど。
日々の生活費だけなら何とかなる月もありますが、固定資産税や家電の買い替え、旅行などまとまった支出があれば、当然年金だけでは足りません。
足りない分は、その都度貯金から出していました。
それに加え、孫が生まれてからはプレゼントや祝い金、外食、レジャーなどの支出が増えていました。ざっと計算しただけでも、ここ数年で100万円を優に超えていました。
「1回1回は数万円なんです。でも全部合わせると、『こんなに使っていたんだ』と驚きました」
SNSの投稿も見返しました。
ランドセル、誕生日プレゼント、旅行先で買ったおもちゃ。その写真を投稿するたびにコメントがつき、ヒロコさん自身も嬉しくなっていました。
「孫が喜ぶから買っていたのは本当です。でも、買ったものをSNSに載せて、みんなから『いいおばあちゃん』と言ってもらうところまでがセットになっていたのかもしれません」
孫へのお金も「老後資金」から出ている
総務省「家計調査」によれば、2025年の65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、実収入が月25万4,395円、可処分所得が22万1,544円なのに対し、消費支出は26万3,979円でした。可処分所得と消費支出の差は月4万2,435円に上ります。
もちろん、実際の家計は世帯によって大きく異なります。ただ、退職後は基本的に現役時代のような給与収入がなくなります。
「孫のためだから」と数万円ずつ使っているつもりでも、その原資は年金か、それまでに蓄えてきた老後資金です。月3万円なら年間36万円。5年間続けば180万円になります。
孫への援助そのものが悪いわけではありません。
大切なのは、「してあげたいこと」と「してあげられること」を分けて考えることでしょう。
ヒロコさんは現在、息子夫婦との約束を守り、孫の写真はSNSに一切載せていません。
プレゼントについても、勝手に購入するのではなく、必要なものがあるか息子夫婦に聞くようになりました。
「最初はお嫁さんに怒られたことばかり考えていました。でも、息子に『自分たちのために使って』と言われたことのほうが、あとになって効きましたね」
孫がかわいい。できることなら何でもしてあげたい。
その気持ちは、きっとこれからも変わらないでしょう。
しかし孫の成長と同じように、祖父母自身も年齢を重ねていきます。
将来、医療や介護などでまとまったお金が必要になる可能性もあります。
「孫のため」の支出だからこそ、無制限にするのではなく、自分たちの老後まで見据えた線引きが必要なのかもしれません。