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気づけば、通帳残高は300万円…
総務省の「家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果」では、65歳以上の夫婦のみの無職世帯は、実収入が月25万4,395円である一方、支出は29万6,829円。平均でも月約4万2,000円の赤字です。
佐伯さん夫婦の場合、その赤字をはるかに超える金額が貯金から出ていきました。
車、旅行、リフォームに加え、家電の買い替えや外食――1年間、欲望のままお金を使った結果、貯蓄は1,800万円から約300万円まで減っていました。
「まさか、こんなに使っているとは思わなかった」
佐伯さんは、元教え子の一人にその話をしました。
「1年で1,500万円が消えてね――」
「えっ、詐欺ですか? 警察に相談しました?」
「いや、ちょっと散財しすぎた」
「先生、いくらなんでも、それは使いすぎですよ」
教壇に立っていたころは、「怒ると怖い先生」というイメージでやってきました。しかし、元教師になった今、あまりの散財っぷりに元教え子が唖然とする事態に。返ってきた呆れ顔の言葉に、佐伯さんは思わず苦笑するしかなかったといいます。
「でもね、妻に『ずっと我慢してた』と言われたら、『やめよう』とは言えないですよ」
とはいえ、この調子で散財を続けるわけにはいきません。旅行は年に2回に減らし、月ごとの生活費も年金内に収めることを基本としました。残った約300万円についても、医療費や住宅の修繕に備えて簡単には使わない方針です。
「使うときには使う。それはいいと思う。お金はあの世に持っていけませんし。ただ、タガが外れてしまっていた。後悔はありませんが、自分のことながら怖いですよね」
金融経済教育推進機構『金融リテラシー調査2025年』によると、老後の生活費に資金計画がない人の割合は59.9%に達します。また、同機構『家計の金融行動に関する世論調査2025年(二人以上世帯)』でも、老後を心配する世帯が78.2%を占める一方、実際に生活設計を立てている世帯は35.1%にとどまります。同調査では、資産が減少した理由として「耐久消費財の購入」(19.5%)や「旅行・レジャー費の支出」(17.6%)も多く挙げられています。
退職金や年金を過信せず、定年後の早い段階で具体的な収支計画を立てることが、「タガが外れた散財」で破綻させない大事なステップです。