「退職金や十分な年金があれば、老後資金は安泰」と安心していませんか。長年の我慢の反動や退職後の開放感から、わずか1年で巨額の貯蓄を失ってしまうケースは珍しくありません。本記事では、ある元教師の過度な散財事例をきっかけに、定年後の資金計画の重要性と、老後破綻を防ぐための具体的なポイントを解説します。
ずっと我慢してたんだ…「年金月18万円」68歳の元高校教師、わずか1年で「貯金1,500万円」を失った理由に教え子も唖然 ※写真はイメージです/PIXTA

気づけば、通帳残高は300万円…

総務省の「家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果」では、65歳以上の夫婦のみの無職世帯は、実収入が月25万4,395円である一方、支出は29万6,829円。平均でも月約4万2,000円の赤字です。

 

佐伯さん夫婦の場合、その赤字をはるかに超える金額が貯金から出ていきました。

 

車、旅行、リフォームに加え、家電の買い替えや外食――1年間、欲望のままお金を使った結果、貯蓄は1,800万円から約300万円まで減っていました。

 

「まさか、こんなに使っているとは思わなかった」

 

佐伯さんは、元教え子の一人にその話をしました。

 

「1年で1,500万円が消えてね――」

「えっ、詐欺ですか? 警察に相談しました?」

「いや、ちょっと散財しすぎた」

「先生、いくらなんでも、それは使いすぎですよ」

 

教壇に立っていたころは、「怒ると怖い先生」というイメージでやってきました。しかし、元教師になった今、あまりの散財っぷりに元教え子が唖然とする事態に。返ってきた呆れ顔の言葉に、佐伯さんは思わず苦笑するしかなかったといいます。

 

「でもね、妻に『ずっと我慢してた』と言われたら、『やめよう』とは言えないですよ」

 

とはいえ、この調子で散財を続けるわけにはいきません。旅行は年に2回に減らし、月ごとの生活費も年金内に収めることを基本としました。残った約300万円についても、医療費や住宅の修繕に備えて簡単には使わない方針です。

 

「使うときには使う。それはいいと思う。お金はあの世に持っていけませんし。ただ、タガが外れてしまっていた。後悔はありませんが、自分のことながら怖いですよね」

 

金融経済教育推進機構『金融リテラシー調査2025年』によると、老後の生活費に資金計画がない人の割合は59.9%に達します。また、同機構『家計の金融行動に関する世論調査2025年(二人以上世帯)』でも、老後を心配する世帯が78.2%を占める一方、実際に生活設計を立てている世帯は35.1%にとどまります。同調査では、資産が減少した理由として「耐久消費財の購入」(19.5%)や「旅行・レジャー費の支出」(17.6%)も多く挙げられています。

 

退職金や年金を過信せず、定年後の早い段階で具体的な収支計画を立てることが、「タガが外れた散財」で破綻させない大事なステップです。