転職が一般化した現代。一方で、予期せぬ会社都合による突然の失職リスクは誰の身にも潜んでいます。順風満帆な日常が一瞬で崩れ去ったある男性の事例を通し、雇用に潜む過酷な現実を紐解きます。
「会社が何か、おかしい…」〈月収50万円〉40歳サラリーマン、金曜朝の通勤電車で同僚からLINE。出社して30分「本日付で解雇」に絶句 ※写真はイメージです/PIXTA

金曜朝、突然「無職」になった

「今日を乗り切れば休みだ」

 

金曜日の朝、都内へ向かう通勤電車のなかで、佐藤大輔さん(40歳・仮名)はそう考えていました。

 

会社員として働き、月収は約50万円。妻と小学生の子ども2人の4人家族。週末には家族で出かける予定もありました。

 

そのとき、スマートフォンが震えました。同じ部署で働く同僚からのLINEでした。

 

「今どこ?」

「会社が何か、おかしい」

「社長と役員が朝から会議室にいる。総務も呼ばれてる」

 

佐藤さんは、この時点では深刻に考えませんでした。月末も近い。何か重要な会議でもしているのだろう。そう思ったといいます。しかし、続けて届いたLINEを見て、表情が変わりました。

 

「全員、会社から出るなって言われてる」

 

何が起きているのか、佐藤さんには、まだわかりませんでした。

 

会社に到着すると、フロアには社員が集まっていました。同僚同士で小声で話をしています。

 

「給料、どうなるんだろう」

「取引先から電話が来てるらしい」

「会社、潰れるんじゃないか?」

 

佐藤さんも状況を尋ねました。しかし、誰も正確なことを知りません。

 

出社して30分ほど過ぎた午前9時過ぎ、総務担当者から社員全員が呼ばれました。会議室の前には、社長と役員。そして社長が資料を見ながら話し始めます。

 

「本日をもって、事業を停止することになりました」

 

一瞬、意味が理解できなかったと佐藤さんはいいます。

 

「どういうことですか?」

「給料は支払われるんですか?」

 

そして、誰かが聞きました。

 

「俺たちは、どうなるんですか?」

 

社長は少し間を置いて答えました。

 

「今後、雇用を維持することはできません」

 

その日のうちに、従業員全員が解雇されることになりました。

 

総務省『労働力調査(基本集計)』によると、2026年7月、完全失業者数は169万人で、完全失業率は2.4%。離職理由別の失業者内訳を見ると、「自発的な離職(より良い条件の仕事を求めての退職など)」が多数を占める一方で、「勤め先や事業主の都合(人減らしや事業不振・倒産など)」による非自発的な失業者も常時数十万人規模で存在しています。

 

自発的なステップアップ転職であれば年収維持やキャリアアップを狙いやすいものの、会社都合による突然の離職では、十分な準備期間がないまま再就職活動を余儀なくされるため、前職と同等の条件(月収50万円規模)を即座に確保できるとは限らないという厳しい現実があります。