共働きだった世帯は、一馬力で家計を担っていた世帯よりも年金・退職金が潤沢です。しかし、共働き夫婦がやってしまいがちな家計管理の落とし穴もあって……。事例を見ていきます。※事例の人物名はすべて仮名です。
財布を1つにしておけばよかった…「年金月26万円」「退職金3,700万円」の70歳夫婦「勝ち組のセカンドライフ」が一転、老後破産したワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

高収入世帯の「夫婦別財布」リスク

「自分も稼いでいるが、相手も貯めているだろう」という心理的依存は、高収入の共働き夫婦に多く見られます。

 

内閣府の『令和7年版高齢社会白書』のデータを見ると、こうした「夫婦間での家計の不透明さ」や「住居費という固定費への危機感の薄さ」が、なぜ高収入世帯の老後破綻を招くのか、その客観的な背景が浮かび上がってきます。

 

まず、お互いの資産を開示せず「なんとかなるだろう」と先延ばしにしてしまう心理的背景には、高齢期の生活設計に対する全体的な準備不足があります。 同白書の調査において、60歳以上のシニア層に「今後の生活に向けて具体的に準備しているもの」を尋ねたところ、最多となったのは「準備しているものはない」で37.4%に上ります。

 

さらに、パートナーと同居している世帯であっても、38.3%が「具体的な準備は何もしていない」と回答しています。「お互いに稼いでいるのだから、あえて財布を開示しなくても大丈夫だろう」という無意識の楽観と油断が、多くの共働き世帯に潜む死角となっているのです。

 

シンジさん夫婦を破滅に向かわせた最大の要因は、リタイア後も都心の家賃20万円のマンションに住み続け、月40万円もの固定費赤字を放置したことにあります。同白書の不安に関する調査では、「ローンの返済や家賃の支払いができなくなること」に経済的な不安を抱く高齢者は、全体でわずか7.6%しかいません。 しかし、この数字の背景には、65歳以上の高齢者の83.0%(83.0%:一戸建て79.8%、分譲マンション3.2%の合算)が「持ち家」に暮らしているという日本のシニア層の現実があります。

 

つまり、世間の大多数の高齢者にとって「老後の住居費」はすでに完済された固定費であり、だからこそ返済不安の割合(7.6%)も低く出ているのでしょう。そのようななかで、「家賃がかかり続ける賃貸暮らし」のまま老後も現役並みの浪費を続ければ、家計は全く異なるハイリスクなフェーズに突入します。

 

白書における高齢者(二人以上の世帯)の貯蓄分布を見ると、シンジさん夫婦の「5,200万円(退職金+貯蓄)」という手元資金は、貯蓄4,000万円以上の世帯(全体の18.8%)に属する、客観的には「勝ち組」でした。しかし、高齢者世帯の貯蓄現在高の中央値が1,604万円であるなか、家賃20万円を抱えたまま月70万円を消費する世帯(年間約400万〜500万円の赤字)においては、どれほど潤沢に見える5,200万円の資産もわずか数年で溶けて中央値を割り込み、一気に「生活保護」を検討せざるを得ない極限の困窮へと転落します。ちなみに現状、70歳以上の生活保護率は3.03%です。

 

自分たちの個別具体的な「住居形態」と「固定費リスク」を現役時代から夫婦で共有し、家計を一本化しておくことができていれば、シンジさん夫婦も老後破産という深刻な事態に陥らずに済んだかもしれません。

 

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