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老後も「資産運用」の落とし穴
現役時代以上に質素倹約を強いられる生活に、妻の陽子さん(60歳・仮名)はポツリと漏らします。
「夫が定年を迎えたら、もっと楽しく暮らせると思っていました。別に無駄遣いをするという意味ではなく、気持ちの部分なんですが……」
飯田さんはなぜ、現役時代以上に資産運用へと駆り立てられていたのでしょうか。
「非課税による優遇や複利効果を最大化できるというメリットを目にした、というのはもちろんあります」
昨今、耳にすることも多い「NISA貧乏」の多くに共通する、非課税枠を埋めたいという衝動。それ以上の不安感が飯田さんにはありました。
「いざ収入がゼロになると、将来が不安になって。確かに65歳からは年金を受け取れますが、このままインフレが続いたらとか思うと……お金はいくらあっても不安は消えない」
「おかげさまで、昨今は市場がいいので、資産は確実に増えています。しかし旅行にお金を使うとか……怖くて、怖くて」
金融経済教育推進機構『家計の金融行動に関する世論調査2025年(二人以上世帯)』によると、老後に「心配がある」世帯は78.2%に上り、年金支給時に最低準備しておくべき金融資産残高は平均2,267万円となっています。同機構『金融リテラシー調査2025年』では、50代で退職後の生活費の必要額を認識している人は46.7%、具体的な資金計画を立てている人は35.5%にとどまる実情が示されています。
こうした計画の不透明さやインフレへの恐怖心が、十分な資産があっても「もっと増やさなければ」という焦りを生み、定年後の過度な倹約生活へと駆り立てる要因となっています。