※写真はイメージです/PIXTA
夏休みが終わり…疲れ切った
6日目の夜。長女一家は帰り、家には長男一家だけが残っていました。夕食後、美智子さんが6人分の食器を洗っていると、夫が言いました。
「明日帰るんだから、もう少しだよ」
美智子さんは思わず、「あなたは何もしないから、そんなこと言えるのよ」と言い返してしまったといいます。強い口調にぎょっとしたような表情の夫。誰かに「やって」と頼まれたわけではありません。美智子さん自身が、長男の妻に気を遣い、子どもたちに差をつけたくないと思い、動いていたのです。
翌日、長男一家を見送ったあと、美智子さんは夫に言いました。
「本当に疲れた。もう来ないで……今はそんな気持ち」
長男の妻にも、長女にも、孫たちにも気を遣う。食事を作り、買い物をし、片付ける――2つの家族が帰省してくると、負担は何倍にもなります。孫の成長とともに、負担そのものが増えていきます。
「孫が中学生とか、高校生になると、家族と行動するのを嫌がったり、部活や勉強などで、帰省してくれなくなる、なんて聞くじゃないですか。大変なのも今のうちで、そのうち寂しくなるのでしょうか」
しかし、子ども家族が帰省してくるたび負担に感じ、心から喜べない状況はどうにかしたい。そんな思いを抱えていた数日後、長女の由美さんから電話がかかってきました。
「お母さん、この前、すごく疲れてなかった?」
美智子さんは「大丈夫よ」と答えましたが、由美さんは続けました。
「お兄ちゃんたちが帰ったあと、お母さん、ずっとぼーっとしてたでしょう。ちょっと心配になって……」
その言葉を聞いて、美智子さんは初めて本音を漏らしました。
「実はね……7日間は、ちょっと長かった。でも、みんなには来てほしいのよ」
すると由美さんは、
「じゃあ、次はホテルに泊まってもらうのは? 昼間はみんなで過ごして、夜はホテル。お母さんも少し休めるし」
と提案しました。
「お兄ちゃんたちにも、私から話してみようか」
美智子さんは少し迷ったあと、「そうしてくれる?」と答えたといいます。
内閣府『高齢者の生活と意識に関する国際比較調査(第10回)』によると、日本の高齢者が望む子どもや孫との付き合い方は、「ときどき会って食事や会話をするのがよい」が59.6%で最多となっています。かつて主流だった「いつも一緒に生活できるのがよい」という同居志向は、第1回の約6割(59.4%)から、今回の第10回では14.0%へと大きく減少しました。
「会いたいけれど、四六時中一緒なのは気疲れする」という美智子さんの本音は、多くのシニア世代に共通する本音といえるでしょう。お互いの生活リズムを尊重し、適度な距離感を保つ帰省スタイルは、これからのスタンダードになりそうです。