新しい業務を依頼した瞬間、「できません」「無理です」と返してくる部下――。「やる前から諦めるな」と指導したい気持ちを抑え、強く責めれば「パワハラだ」と訴えられかねない現代。かといって「じゃあいいよ」と見捨てたり、他のメンバーに仕事を振り替えたりすれば、今度はチーム全体から不満が噴き出してしまいます。本記事では、吉田直実氏の著書『中間管理職の生存戦略 自分の「思い込み」に気づき最適解を見つける本』(ごきげんビジネス出版)より、「できません」の裏に隠れた部下の“サイン”と、上司が取るべき対応のヒントを探ります。
仕事を振ったら「できません」「無理です」と即答…〈やる気のない部下〉を責めればパワハラ、見捨てることもできない、中間管理職の悲哀 (※写真はイメージです/PIXTA)

開口一番「できません」「無理です」と返す部下

新しい業務や少し難易度の高いタスクを依頼すると、開口一番「できません」「無理です」と返してくる部下がいます。理由を聞いても、「時間がありません」「スキルが足りません」などと、決まり文句のような説明しか返ってこない。上司としては、「やる前からあきらめるな」「考えようとすらしていない」と苛立ちを覚えつつも、強く押せば押すほど、さらに後ろ向きになっていく気配も感じる。

 

一方で、「じゃあ仕方ないか」とほかのメンバーに振ってばかりいると、その人たちから別の不満が噴き出してくる。部下の「できません」の裏に、リソース不足など現実的な制約もあれば、失敗への恐れや自己評価の低さなど心理的な要因もあるでしょう。

 

安易に「甘え」と切り捨てることもできず、かといって、言われるがままに引き下がるわけにもいかない。すぐに無理と言う部下をどう扱うかは、簡単なようでいて、なかなか明快な答えが出ないテーマではないでしょうか。さあ、あなたなら、どうする!?

理由を詳しく聞く、あえて任せない…上司が取れる「5つ」の選択肢

1.「なぜ無理なのか」を具体的に聞き出す(背景傾聴型)

メリット:表面的な「無理」の裏にある本当の障壁(スキル・時間・感情)を把握できる。

デメリット:丁寧に聞かないと、単なる愚痴大会になりかねない。

注意点:「それは無理だよね」と同調しすぎず、「どうすればハードルが下がるか」を一緒に言語化する流れを意識する。

 

2.タスクを細かく分解し、一歩目だけを一緒に決める(タスク分解型)

メリット:漠然とした不安を、小さな行動に変換しやすく、着手のハードルを下げられる。

デメリット:上司の工数がかかりすぎると、上司に依存する関係になりやすい。

注意点:最初は一緒に分解しつつ、徐々に「次は自分で分解してみて」と、自走を促すステップを組む。

 

3.「まずはやってみる」を前提に条件交渉をする(条件交渉型)

メリット:「絶対無理」という思考から、「こうならできるかも」へのシフトを促せる。

デメリット:交渉ばかりがクセになり、「毎回値切る人」になるリスクがある。

注意点:「やること」は固定し、「期限」「優先順位」「サポート内容」といった交渉可能な要素を明確にして話す。

 

4.小さな成功体験を意図的に積ませる(自己効力感強化型)

メリット:「やればできた」という実感が「とりあえずやってみる」マインドを育てる。

デメリット:短期的には、あえて簡単な仕事を多く割り振る必要があり、ほかのメンバーの負担感を生む場合がある。

注意点:成功したポイントをその都度、言語化して伝え、「自分でもできる」が本人の言葉になるよう支援する。

 

5.あえて任せない・機会を渡さないことで気づかせる(機会コスト可視化型)

メリット:「無理と言い続けると、任されるチャンスが減る」という現実を体感させられる。

デメリット:放置と紙一重で、そのまま本当に埋もれてしまう危険がある。

注意点:単に外すのではなく、「今回は〇〇さんに任せる。次、似た案件があれば任せたいので、そのときは『やります』と言えるように準備しておいてね」と、意図と期待を言葉にしていく。