「最期まで自宅で暮らしたい」と願う高齢親の思いを汲みつつも、一人暮らしの限界や事故のリスクに頭を悩ませる家族は多いものです。ある家族の事例から、お互いが納得できる解決策を考えます。
「お義母さん、もう無理です…」お盆帰省の翌週、48歳嫁から届いた「衝撃のLINE」に、〈年金月16万円〉73歳母、涙のワケ ※写真はイメージです/PIXTA

嫁「もう無理です」の意味

最初の一文を見て、陽子さんは凍りつきました。

 

「お義母さん、もう無理です……」

 

嫁に嫌われた。迷惑をかけてしまった。そう思い、頭が真っ白になったそうです。ところが、続く文章は意外なものでした。

 

「もう一人暮らしは難しいのではないかと思っています。直人さんは、お義母さんの意見を尊重して、自宅で介護をと言っているけれど、私は限界だと思っています」

 

そして、最後にこう書かれていました。

 

「一度、施設に見学に行ってみませんか?」

 

陽子さんは何度も読み返し、涙したといいます。

 

「施設に入ってください、ではなかったんです。『一緒に見に行きませんか』だった。それが嬉しくて」

 

由美さんは、お盆のとき見た陽子さんの様子を振り返ります。

 

「いつ事故があってもおかしくない。お義母さんの気持ちを尊重するのは大切だけど、手遅れになってからでは遅い。お義母さんには、これからも元気でいてほしいですし」

 

その言葉を聞き、陽子さんは初めて、自分の「自宅で暮らしたい」という希望が、家族にどのような負担をかけるのかを考えました。そして陽子さんから由美さんに電話をかけ、施設への入居を検討したいと伝えたそうです。

 

「由美さんが色々調べてくれて、仕事で忙しいのに、見学にもついていってくれた。いいお嫁さんをもらったと実感しました」

 

陽子さんは、3軒ほど見学した施設のなかから、予算的にも合致した介護付き有料老人ホームへの入居を決めたと話します。

 

「最期まで自宅で」と願う親の気持ちを尊重したい一方で、在宅介護が家族に与える負担は決して軽くないのが現状です。

 

厚生労働省『2025(令和7)年 国民生活基礎調査』によると、同居する主な介護者の約6割が悩みやストレスを抱えており、その最大原因は「家族の病気や介護」です。また、事例の陽子さんと同じ「要介護2」の段階でも、すでに同居介護者の約2割が仕事や家事、外出などの日常生活に影響が生じていると回答しています。

 

限界を迎える前に「施設入居」という選択肢を「一緒に検討する」ことは、お互いの暮らしと心身の健康、そして良好な親子関係を守るための前向きな決断といえるでしょう。