お盆の帰省は家族の絆を深める機会ですが、思わぬ言葉や行動から決定的な亀裂が生まれることもあります。老後の安心のために蓄えた資産を巡り、親と子の間で生じる「お金」に対する意識のズレとは。ある家族の事例を通し、世代間で生じる衝突の背景と防ぐためのポイントを考えます。
「もう帰ってくるなと言いました」…〈年金月17万円〉79歳母、お盆帰省後の51歳長男に「絶縁宣言」のワケ ※写真はイメージです/PIXTA

息子は「お金」の心配しかしてなかった…

病気になるかもしれない。介護が必要になるかもしれない。家を直さないといけなくなるかもしれない――。

 

家族に迷惑はかけたくない、何があっても自分で解決できるようにと、一定の貯蓄を守ってきました。それを、まだ元気なうちから「いくらあるのか」と繰り返し聞かれる。しかも、自分に断りなく書類まで探される……。

 

「お金の話をされること自体が嫌だったわけではありません。私の生活を心配してくれるなら、いくらでも話します。でも浩一が知りたかったのは、死んだあと、いくらもらえるか、でした」

 

帰京する直前、浩一さんは「また正月に来るよ」と言いました。洋子さんは答えませんでした。そして玄関先で、こう言ったといいます。

 

「もう帰ってこなくていい。二度と帰ってこないで」

 

浩一さんは「何だよ、急に」と声を荒らげました。

 

「俺は母さんのことを考えて言ってるんだ」

 

洋子さんは、その言葉を聞いて、こう返しました。

 

「私のことを考えているなら、私が死んだあとのお金の話ばかりしないで」

 

そのまま浩一さんは帰りました。

 

「息子に何も渡さないと決めたわけではありません。ただ、私のお金は、私が生きている間は私のために使いたい。それだけです」

 

前出調査によると、70代の金融資産の保有目的は「老後の生活資金(72.2%)」や「病気や不時の災害への備え(56.9%)」が多く、「遺産として子孫に残す」ために保有している人は11.1%に過ぎません。また、「子どもはいるが、自分の人生を楽しみたいので財産を使い切りたい」とする70代も22.7%に上ります。

 

子ども側は「いずれ自分が相続するもの」と思いがちですが、親世代にとっては「自分自身の老後の安心を守るためのお金」。この温度差を互いに理解することが、不要な衝突を避けるポイントといえるでしょう。