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息子は「お金」の心配しかしてなかった…
病気になるかもしれない。介護が必要になるかもしれない。家を直さないといけなくなるかもしれない――。
家族に迷惑はかけたくない、何があっても自分で解決できるようにと、一定の貯蓄を守ってきました。それを、まだ元気なうちから「いくらあるのか」と繰り返し聞かれる。しかも、自分に断りなく書類まで探される……。
「お金の話をされること自体が嫌だったわけではありません。私の生活を心配してくれるなら、いくらでも話します。でも浩一が知りたかったのは、死んだあと、いくらもらえるか、でした」
帰京する直前、浩一さんは「また正月に来るよ」と言いました。洋子さんは答えませんでした。そして玄関先で、こう言ったといいます。
「もう帰ってこなくていい。二度と帰ってこないで」
浩一さんは「何だよ、急に」と声を荒らげました。
「俺は母さんのことを考えて言ってるんだ」
洋子さんは、その言葉を聞いて、こう返しました。
「私のことを考えているなら、私が死んだあとのお金の話ばかりしないで」
そのまま浩一さんは帰りました。
「息子に何も渡さないと決めたわけではありません。ただ、私のお金は、私が生きている間は私のために使いたい。それだけです」
前出調査によると、70代の金融資産の保有目的は「老後の生活資金(72.2%)」や「病気や不時の災害への備え(56.9%)」が多く、「遺産として子孫に残す」ために保有している人は11.1%に過ぎません。また、「子どもはいるが、自分の人生を楽しみたいので財産を使い切りたい」とする70代も22.7%に上ります。
子ども側は「いずれ自分が相続するもの」と思いがちですが、親世代にとっては「自分自身の老後の安心を守るためのお金」。この温度差を互いに理解することが、不要な衝突を避けるポイントといえるでしょう。