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孫が来るたび用意する1万円入りのポチ袋
「今度の日曜日、子どもたちが来るから」
そう言って銀行から1万円札を数枚引き出した佐藤美智子さん(仮名・72歳)。
夫は6年前に亡くなり、一人暮らし。現在の収入は、遺族年金を含めて月13万円ほど。手取りは月12万円強です。持ち家のため住宅ローンなどの負債はなく、貯金は約1,400万円あります。
金融経済教育推進機構『家計の金融行動に関する世論調査(2025年)』によると、70代単身世帯の金融資産保有額の平均は1,489万円(非保有含む)で、美智子さんの約1,400万円は平均に近い水準です
しかし、同調査で70代が年金支給時に最低準備しておくべきと考える金融資産残高の平均は1,416万円。さらに同世代の64.0%が老後の生活に「心配である」と回答。美智子さんも将来への不安を吐露します。
「これから何が起きるかわかりませんから、できるだけ貯金は取り崩したくないですよね」
それでも、孫が来るときだけは財布のひもが緩みます。小学生の孫が2人。中学生になった孫が1人います。3人分、それぞれ1万円。合計3万円です。
美智子さんは、毎回きれいなポチ袋を用意します。中身を入れるところまで済ませてから、引き出しにしまっておくのが習慣になりました。
「もう少し少なくてもいいかなとは思うけど、上の子には1万円あげて、下の子には5,000円というわけにもいかないでしょう」
1回の訪問で3万円。月に1度で年間36万円。美智子さんの年金収入は年間約156万円ですから、孫への小遣いだけで年金の4分の1近くに達します。
それでも、孫たちが来ると聞けば用意してしまう。その理由は、美智子さん自身にもはっきりとはわかっていませんでした。
数日前、娘の麻衣さん(44歳・仮名)から電話がありました。
「お母さん、今度の日曜日、3人とも行きたいって。お昼もお願いしていい?」
「もちろん。何が食べたいか聞いておいて」
「ありがとう。あ、そうだ。いつもお小遣いまで悪いから、今回はいいからね」
娘は何気なく言っただけでした。ところが、美智子さんは電話を切ったあと、財布から1万円札を3枚出しました。
「いいからね」と言われたからこそ、渡さなければと思ってしまったのです。
「娘に気を遣わせたくなかったんです。孫たちが来てくれるのに、何も渡さないのも悪い気がして……」