(※写真はイメージです/PIXTA)
孫と過ごす昼、不安が押し寄せる孤独な夜
長年勤め上げた大手企業を無事に定年退職し、退職金やコツコツ蓄えてきた貯蓄を合わせ、夫婦で約8,000万円の老後資金を準備したカズミさん(75歳)と夫のゴロウさん(77歳)。
郊外の持ち家で暮らし、夫婦の年金収入は合計で月約28万円。日中は近所に住む孫たちが遊びに訪れ、かけがえのない時間を過ごせる穏やかで幸せな日々。周囲からは「悠々自適なセカンドライフ」「老後安泰で羨ましい」と羨む眼差しを向けられています。
しかし、カズミさんには人にいいづらい悩み事がありました。夜、布団に入ると猛烈な不安が襲いかかり、毎晩のようにじっと天井を見つめて眠れなくなってしまうのです。
カズミさん夫婦の楽しみは、小学生と中学生になった4人の孫の成長を見守ることです。週末になれば孫を連れて外食に出かけ、誕生日や入学祝いには欲しいものを買い与え、希望する習い事や塾の費用もさりげなく援助してきました。
「おばあちゃん、ありがとう!」
孫たちの眩しい笑顔を見る瞬間は、カズミさんにとってなによりの生きがいです。夫のゴロウさんも「老い先短い人生、孫や子どもたちのために使えるお金があるのは幸せなことだ」と満足気で、孫のリクエストには二つ返事でお財布の紐を緩めます。
しかし、孫たちが帰り、ゴロウさんがいびきをかいて眠りについた深夜、カズミさんの「一人だけの時間」が始まります。家計簿と郵便通帳、そして電卓を取り出したカズミさんは、暗いリビングで静かに計算を始めます。
「孫のお祝いやお食事代で20万円……。今月も預金を取り崩してしまった」
老後の8,000万円という資産をカズミさんは「多い」とは思えないのです。