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小遣いをあげないと、嫌われると思っていた
夫が亡くなってから、一人暮らしになりました。娘一家は車で30分ほどの場所に住んでいます。それでも、顔を合わせるのは月に1度程度です。
「孫が来てくれる日は、やっぱり楽しみなんです」
だからこそ、小遣いを渡さない自分になることが怖かったといいます。
「何も渡さなかったら、『ばあばのところに行っても何もない』って思われるんじゃないかって」
美智子さんは、そこで一度考えながら、「……私、なんでこんなに孫の機嫌を取っているんでしょうね」とポツリ。
そのような母の様子を察してか、娘の麻衣さんが電話をかけてくれました。
「お母さん、子どもたちはお金がなくても行きたいって言っているから」
美智子さんは、すぐには信じられませんでした。
「でも、お小遣いを期待しているんじゃ……」
「一度くれると期待しちゃうのは、大人もそうでしょ」
そこで、娘と相談してルールを決めました。孫への小遣いはなくし、お金を渡すのはお正月だけ。プレゼントは誕生日だけ。
「代わりに、おいしい料理を作って。悔しいけれど、お母さんのレベルを超えられなくて」
特に子どもたちは、美智子さんの作る唐揚げが大好物だということ。美智子さんの家に遊びに来るのは、それだけで十分だといいます。
その日曜日には、唐揚げを用意して待っていました。大きな鶏もも肉を1,500円分。全部で50個、揚げました。このときのおもてなしはそれだけ。それでも孫たちは特に不満を言いませんでした。
「お金を渡さないと嫌われる、と思っていたんですね」
「私が勝手に心配していただけだったのかもしれません」
現在、孫たちには、麻衣さんとの約束のお年玉をあげています。さらに無理のない範囲でこっそり用意することもあります。
「本当にちょっとだけ。やっぱり孫の喜ぶ顔は見たいから。渡しているところを娘に見つかって、怒られてますけど」
内閣府『令和7年度 高齢社会対策総合調査』によると、日本の高齢女性の60.6%が「子供や孫など家族との団らんの時」に生きがいを感じると回答。しかし、同調査で老後の貯蓄や資産が「まったく足りないと思う」という回答は28.9%に上ります。
「お金をあげなければ嫌われる」という不安は、親世代の杞憂ということも往々にしてあるでしょう。身の丈に合ったもてなしが、本当は望まれているのかもしれません。