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「母親ファースト」に生きてきた39歳
「お母さん、ごめん。もう、俺の人生を決めるのはやめてほしい」
東京都内在住の会社員、佐伯直人さん(仮名・39歳)。月収62万円、年収にすると1,000万円の大台直前と、同年代の会社員としては高水準にありました。
これだけの給与があって独身――周囲の人からは独り身であることを満喫していると思われていましたが、実情は違いました。生まれて39年、一度も実家を出たことはありません。家族、とりわけ母親ファーストの生活を送っていました。
母・京子さん(68歳・仮名)は、昔から息子の直人さんに厳しい母親でした。
「勉強だけは誰にも負けないようにしなさい」
「大学は一流に行くのが当たり前」
「就職は名前の知られた会社にしなさい」
直人さんは、母に言われるまま一流大学へ進み、日本を代表する一流企業に就職しました。母の干渉は就職してからも続きます。キャリアアップを目指して転職を考えれば「今の会社を辞めるなんて、何を考えているの」と言われ、交際相手ができれば「どこに勤めているの? 大学はどこ?」と詮索してくる――。
「息苦しいと思ったことは、何度もあります。ただそんな状況をどうにかしようとは思えなかった。諦めていたんです」
転機になったのは5年前です。父親が亡くなり、2人の間に緩衝材がなくなりました。京子さんの直人さんへの依存は、以前より明らかに強くなります。
「直人が家にいてくれるだけで安心する」
「あなたまでいなくなったら、私は一人になっちゃう」
内閣府『令和8年版高齢社会白書』によると、65歳以上の高齢者がいる世帯のうち「親と未婚の子のみの世帯」は、令和6年現在で561万9,000世帯と、全体の20.4%を占めています。
このような同居世帯では、親の高齢化に伴う将来的な介護や関係性の維持が課題となるケースが少なくありません。京子さんも将来を見据えて、不安感から直人さんへの依存心を強めた部分があったのかもしれません。直人さん自身も、そんな母を放っておけなかったのでしょう。しかし、そんな関係に終止符が打たれることになります。