親の高齢化に伴い、良かれと思って始めた「義理の親との同居」。しかし、負担の偏りによる夫婦対立や家計の圧迫など、善意から始まった介護が家族の危機を招くケースは珍しくありません。ある親子の事例から、同居介護の落とし穴と対処法を考えます。
「もう、限界…」〈年金月15万円〉82歳義母と同居を始めた52歳嫁。結婚25年、夫の豹変から始まる「家族の崩壊」 ※写真はイメージです/PIXTA

思惑と異なる「義母」との同居生活

52歳の加藤久美子さん(仮名)は、義母・春江さん(82歳・仮名)と同居することになりました。きっかけは、春江さんの一人暮らしが難しくなったことです。

 

年金は月15万円。持ち家の一軒家で暮らしていましたが、転倒してから外出が減り、買い物や通院にも不安が出てきました。

 

夫の加藤健司さん(55歳・仮名)は、母親を施設に入れることには反対でした。

 

「施設というのはな……ちょっと嫌だな」

 

内閣府の「高齢社会に関する意識調査(高齢期の住み替えについて)」でも、高齢者が住み替え先として「介護保険施設」を想定している割合は2.4%、「有料老人ホーム等」でも10.6%にとどまります。また、住み替えの意向がない理由として67.1%が「現在住んでいるところに満足しているから」と答えています。

 

住み慣れた自宅を離れることへの抵抗は、決して珍しくありません。健司さんも、母親の気持ちを考えてのことだったのでしょう。こうして春江さんは、加藤さん夫婦の家で暮らすことになりました。久美子さんも、当初は深刻に考えてはいませんでした。夫はこれまで家事にも協力的で、子ども2人も独立し、ちょうど夫婦2人の生活になったところだったからです。

 

「自分の母親なんだから、夫もいろいろやってくれるだろう」

 

そう思っていたのです。

 

気になったのは家計でした。住宅ローンは約1000万円残っています。夫婦の手取り収入は月39万円ほど。そこに春江さんの年金が加わります。

 

「3人分の収入があれば、何とかなるかな」

 

しかし、最初に問題となったのは、お金ではありませんでした。春江さんは要介護2。着替えや入浴、服薬の確認などに手助けが必要です。介護保険のサービスは利用しており、ケアマネジャーもついていました。それでも、サービスのない時間帯は家族が対応しなければなりません。

 

朝の着替え、服薬の確認、夕食の準備、夜間のトイレ。

 

次第に、その役割は久美子さんへ偏っていきました。