定年後、「これからは夫婦で過ごそう」と考える夫と、自分のペースで暮らしたい妻。老後資金に大きな不安がなくても、夫婦の距離が近すぎることがストレスになる場合があります。専業主婦だった63歳妻が「いまさら働く」ことを選んだ理由から、定年後の夫婦に必要な距離感と家計についてCFPの松田聡子氏が解説します。
「夫は悪くない。でも、もう限界」…66歳元大手勤務夫がまとわりつく“濡れ落ち葉”の老後。〈貯蓄3,000万円〉63歳妻が「いまさらパート勤務」を決意した理由【CFPの解説】
「今日のメシは?」「買い物?俺も行くよ」…定年後、妻について回るようになった夫
千葉県に住む浦野美和子さん(63歳・仮名)は、年金生活者になった夫の秀信さん(66歳・仮名)の何をするにも自分と一緒に行動しようとすることに悩んでいました。
「今日の昼、何食べる?」
「買い物に行くの? じゃあ俺も行くよ」
秀信さんは大手電機メーカーで技術職として長く勤め、定年後も嘱託社員として勤務しました。65歳で仕事を辞め、今はのんびりセカンドライフを送っています。娘2人はすでに結婚し、県外で暮らしているため、夫婦2人暮らしです。
秀信さんの年金は月18万円ほどで、退職金を含め夫婦には約3,000万円の金融資産があります。美和子さんは今までほとんどの時期を専業主婦として過ごしてきたため、65歳から受け取る年金は月7万円程度です。それでも、今も生活に困るような状況ではありません。
ところが、秀信さんが仕事を辞めてから、美和子さんはお金の問題以外でストレスを感じるようになりました。
秀信さんが、とにかく追いかけてくるのです。
友人とランチに行くと言えば「何時に帰る?」。美和子さんが本を読んでいても「明日は何する?」と話しかけてくる。妻を頼って離れない、いわゆる“濡れ落ち葉”と呼ばれる状態です。
秀信さんに悪気がないのは美和子さんも理解しています。 現役時代は帰宅が遅く、休日出勤も珍しくありませんでした。「今まで妻には苦労をかけた。これからは夫婦の時間を大切にしたい」という思いもあるでしょう。
しかし、美和子さんの受け止め方は違います。子どもの手が離れてからは、仲間を見つけて趣味の美術鑑賞をしたり、好きな本を読んだりと、家事以外の時間を自分なりに有意義に過ごしてきました。そこに秀信さんが「割り込んできた」と感じているのです。
夫は「夫婦の時間を増やしたい」と思い、妻は「今までの自分の生活に夫が入り込んできた」と感じる。そのような意識の差が、美和子さんのストレスの原因となっていました。