(※写真はイメージです/PIXTA)
「来年はやめようかな」気楽に会える新しい距離感を求めて
5日間の滞在を終え、東京へ戻る新幹線のなかで、ゴウさんは妻と重いため息をつきました。
「帰省したい気持ちはあるし、親も『またおいで』と言ってくれる。でも、毎回あんなに張り切って、大掃除から食事の準備までさせたら、親の負担が大きすぎる。正直、来年はもう、家族全員でのお盆帰省はやめようかなと思う……」
親の見栄やプライドを傷つけたくない一方で、自分たちが帰ることがかえって親の寿命を縮めているのではないかという罪悪感。ゴウさんは、今後の親との付き合い方について真剣に考えはじめました。
「『明日行くよ』と急に連絡するくらいのほうが、親も準備ができなくて気負わずに済むのかな。あるいは、子どもを3人全員連れていくのではなく、1人ずつ連れて、俺と2人で日帰りで顔を出すくらいのほうが、親も疲れなくていいのかもしれない」
ゴウさんが心から望んでいるのは、豪華なごちそうでも綺麗な客間でもありません。「できる限り日常のまま、お互いに気楽に会って、元気な顔を見せ合えること」。ただそれだけなのです。
頑張らない帰省へのアップデート
高齢の親を持つ現役世代にとって、ゴウさんの抱く葛藤は決して珍しいものではありません。「孫にいいところを見せたい」「手作りの料理でお腹いっぱい食べさせたい」という親側の思いと、「もう無理をしないでほしい」「お金も手間もかけないでほしい」という子世代の思いは、しばしばすれ違います。
親の負担を減らし、お互いが心地よく交流を続けるためには、帰省のスタイルそのものをアップデートしていく必要があるでしょう。
たとえば、食事の準備は親に任せず、「今回は俺たちが外食に連れていくよ」「美味しいお弁当を買っていくからなにも作らなくていいよ」と事前に伝え、親が台所に立つ理由を物理的になくすこと。布団の上げ下げやシーツの洗濯は、高齢者にとって想像以上の重労働になるため、「今回は近くのホテルを取ったから」と伝え、実家には日中だけ顔を出すスタイルに変更するといった案があるでしょう。
また、親側からも、子どもを「もてなす客」として扱うのではなく、「一緒に日常を過ごす家族」へと意識を戻してもらうことが重要です。前日連絡や日帰り帰省など、ゴウさんが考えたような「準備させない工夫」は、親の心身を守るための一つの気遣いです。
「帰省=一大イベント」という固定観念を捨て、老いていく親の現状に合わせた「頑張らない帰省」へと切り替えていく時期が来ているのかもしれません。
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