(※写真はイメージです/PIXTA)
「あのとき買っておいてよかったが…」
現在のコウジさんの月収は49万円(賞与別)です。妻のパート収入を合わせても世帯収入に極端な伸びがあったわけではなく、もしいま、同じマンションを7,200万円超で購入しようとすれば、住宅ローンの審査や毎月の返済に到底耐えられません。
「あのとき、背伸びせずに無理のない範囲で買っておいて本当によかった」コウジさんの胸に込み上げたのは、過去の自分への感謝と安堵の気持ちでした。もしあのときに購入を見送り、賃貸生活を続けていたら、いまの相場のなかでは家を買う機会を完全に失っていたかもしれないと感じたからです。また、これからこの物件を売却して、息子が独立したあとに夫婦でコンパクトな家に住み替えるという選択肢も生まれました。
一方で、これからマイホームを持とうとする息子世代や、現在の高騰に苦しむファミリー層のことを考えると、素直に喜んでばかりもいられない複雑な心境が残ります。
23区不動産高騰の背景と「住まい探し」の現実
今回の事例のように、過去に「人気が薄い」「特徴がない」とされていたエリアの物件であっても価格が倍近くまで跳ね上がっている背景には、以下のような点があります。
都心の不動産価格高騰の影響拡大
都心部や人気エリアのマンション価格が1億円を超えるなど高騰し過ぎた結果、一次取得者層の需要が周辺の「比較的割安だったエリア」へと流れていきました。
その結果、23区全体で底上げが起こり、地味とされていたエリアの地価・中古相場が押し上げられています。建築資材・人件費の高騰による新築の供給抑制新築マンションの建築コストが急増したことで新築の売り出し価格自体が跳ね上がり、買い手が中古市場へと集中したため、築年数が経った中古物件の資産価値が落ちにくくなっています。
実用性重視のニーズ増加
「ブランドエリア」よりも「23区内であり、通勤・生活利便性が担保されていること」を重視する実利的な需要が増えたことで、特徴が少ないとされていた区も使い勝手のよさが再評価されています。
予測不能な不動産市場においては、「資産価値が高まりそうな人気の街」を無理して追うよりも、コウジさんのように「身の丈に合った予算で着実に買える物件を選ぶ」という視点が、結果として長期的な生活防衛につながるケースも少なくありません。ただし、築年数が経過したマンションには、今後の「修繕積立金の値上げ」や「管理体制の維持」といった課題もついて回ります。表面上の価格高騰に過度にとらわれず、将来的な維持コストも見据えながら、生活の基盤となる住まいを守っていく視点が求められています。
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