内閣府の『令和7年版高齢社会白書(高齢者の経済生活に関する調査)』によると、高齢者が今後の生活において経済的な面で不安に思うこととして、「自分や家族の医療・介護の費用がかかりすぎること」を挙げる人は36.6%、さらに「自力で生活できなくなり、転居や有料老人ホームへの入居費用がかかること」は43.1%に達しています。しかしなかには、そんな親の不安に気がつかず、すれ違いが生じてしまう子世代も。事例を通して、子の帰省時にかかるもてなし費用について考えていきます。※事例の人物名はすべて仮名です。
「もうお金がない、とはまだ言えません」“お盆玉2万円”を用意した70代夫婦のもとへ東京から息子家族が帰省も、不穏な空気…孫と息子から出る小さな不満の連続に悶々 (※写真はイメージです/PIXTA)

「お金は振る舞うものではない」親が抱く本音

息子家族から見れば、実家は「いつでも温かくもてなしてくれる場所」に見えていたのかもしれません。しかし、ミチさん夫婦にとって、退職後の蓄えは将来の自分たちの生活を守るための大切な命綱です。

 

「我が家にお金がないわけではありません。しかし、お金というのはいくら苦労して貯めても、使うときは一瞬です。お金はできる範囲を超えて振る舞うものではありませんし、世間の家と比べて贅沢を競うものでもないはずです」

 

世間では「孫には惜しみなくお金を使う」「外食に連れていく」という話も耳にします。しかしミチさんは、一番愚かなのは「みんながやってるから」という理由で、自分の懐事情を無視して周りに合わせることだと考えています。

 

自分の今後の体調や将来必要な費用を考えたとき、これ以上無理をして見栄を張ることはできない——。ミチさんはトモヤさんへ「ごめんね、うちはもうあまりお金を使えないのよ」と率直に伝えることも考えていましたが、実際にはまだ口に出せずにいます。

将来子どもに迷惑をかけないための「見栄を捨てた線引き」

親が子世代に対して「見栄を張らない」と決断することは、冷たさではありません。それどころか、長期的には子世代を守ることにつながる健全なリスク管理といえます。

 

子世代や孫の期待に応えようと無理な支出を重ね、老後資金が枯渇してしまえば、最終的に介護費や生活費の援助という形で子どもに大きな金銭的負担がかかります。「自分の老後は自分の資産で完結させる」ことは、子どもに対する一番の愛情です。

 

また、体力や貯蓄額が減っていくなかで、かつてと同じような手料理や豪勢なもてなしを維持する必要はないでしょう。買ってきたもので食事を済ませることは、持続可能な親族関係を保つために必要な変化です。

 

「お金がない」「以前のようには動けない」という現実を素直に開示することで、子世代側も「実家に頼る」姿勢から「親を気遣う」姿勢へと意識を切り替えるきっかけになるかもしれません。

 

周りの家庭と比べることなく、自分たちの身の丈に合った老後を送る。見栄を捨てて引いた明確な線引きをすることで、お互いに無理のない穏やかな親子関係を維持するための鍵となります。

 

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