総務省の「家計調査(2025年)」によると、65歳以上の夫婦無職世帯は、年間で約50万円もの貯蓄取り崩し(毎月約4.2万円の赤字)を行いながら日々のやりくりをしています。そんな親世代は「せっかくの機会だから」とお盆や正月などの子世代の帰省時に、無理をしてお金や体力を差し出しがちです。しかしちょっとした配慮の欠如が、時に深刻なストレスに変わることも。事例をみていきましょう。※事例の人物名はすべて仮名です。
「孫は、もういいですわ…」朝から晩までスマホに釘付けな息子一家のお盆滞在1週間。76歳夫婦にドッと押し寄せた疲労と“本音” (※写真はイメージです/PIXTA)

去ったあとに残された深い疲労感

会話がない一方で、フミさんとタツオさんの家事負担は限界に達していました。

 

大人4人・子ども2人分の三食の支度と片付け、毎日の大量の洗濯物、複数部屋の掃除や布団の上げ下ろし。1週間、立ちづくめで台所に立ち続けたフミさんの膝は限界を迎え、タツオさんも連日の出費と日中の作業でぐったりとしていました。

 

滞在最終日、お小遣いを受け取った孫たちと息子夫婦は「じゃあ、お世話になりました」とあっさり去っていきました。

 

家の中に残されたのは、散らかった部屋と大量のゴミ、そして山のような洗濯物でした。片付けを終え、ぐったりとソファに倒れ込んだフミさんは、思わずこう漏らしました。

 

「なんだか私、すっかり疲れちゃった」

 

タツオさんも静かに頷くしかありません。孫に会えた嬉しさよりも、ただ重くドッと押し寄せる肉体的・精神的疲労、そして年金暮らしに重くのしかかる出費の虚しさだけが残った1週間でした。

 

「孫は、もういいですわ……。正直、なにしに来たんだと思いました」タツオさんはそう振り返ります。

意識のズレから生じる「残念な帰省の思い出」

かつては「家族全員が集まって近況を報告し合う場」であった帰省ですが、家庭によって、その捉え方は変化しているようです。今回のケースでは、互いの意識のズレから親世代に過度な金銭的・身体的負担が集中してしまいました。

 

まず迎える親側には、「めったに来ないからこそ孫に喜んでもらいたい」「せっかくの帰省だからいい思いをさせたい」といった気負いが生まれていました。その結果、普段の年金暮らしの枠を超えて、高価な食材の準備や外食費の全額負担、孫へのお小遣いなど、身の丈以上の出費を自ら買って出たフミさんとタツオさん。

 

一方で、子世代の側は「実家で羽を伸ばすこと」を目的としており、親のそうした気負いや見えづらい負担に対する配慮が欠けてしまうことも。実家を快適な滞在先として使い、各自がスマホやゲームといった個人の世界に没頭してしまい、食事の準備や連日の光熱費、外食費を親がどのように工面しているかにまで配慮がおよばなかったのかもしれません。

 

「久々の帰省だから」と無理をして出費を重ねる親の気負いと、実家の環境に甘えて親の負担に思いが至らない子世代の無配慮。この2つが重なったとき、長期滞在にかかる費用と家事労働は、年金生活を送る高齢親の許容範囲を大きく超えてしまいます。

 

たまの帰省を互いに納得のいく形で続け、今後も良好な関係を維持するためには、親の好意や我慢に依存しない現実的なルール作りが必要です。滞在期間を短めに設定する、外食代や食費の一部は子世代が負担する、家族間での過ごし方のマナーを共有するなど、親の生活資金や体力を脅かさないための配慮と事前の擦り合わせが求められます。

 

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