(※写真はイメージです/PIXTA)
今年は嫁の実家でなく、我が家へ
郊外の戸建てに暮らすフミさんとタツオさんは、ともに76歳。普段は静かな二人暮らしですが、今年のお盆は特別な気持ちで迎えていました。
例年は息子の嫁側の実家に帰省していた息子一家(息子夫妻と孫2人)が、今年は珍しく、自分たちのもとへ1週間にわたって滞在することになったからです。
「子どもたちが喜ぶご飯を作ってあげよう」
フミさんは何日も前から献立を考え、重い買い出し袋を抱えて準備を進めました。免許は2年前に返納したため、暑いなか、バスで大型スーパーまで向かわなければなりません。年金振込口座から10万円をおろし、普段買わないような上質な肉や孫の好きなお菓子を買い込み、孫に渡すお小遣いを新札で用意。タツオさんも孫が過ごしやすいよう、エアコンの掃除や布団干し、庭の草むしりに精を出しました。70代半ばを過ぎ、足腰に痛みを抱える二人にとって軽い作業ではありませんでしたが、「孫の顔が見られるなら」とその一心で準備を整えていました。
弾まない家族の会話…「Wi-Fi、つながらないの?」
しかし、お盆初日に到着した息子一家の様子は、夫婦が想像していた賑やかな団らんとは大きく異なるものでした。
玄関を入るなり、孫たちはリビングのソファに倒れ込み、それぞれのタブレット端末を取り出しました。息子もスマートフォンを眺めたまま、「おふくろ、家のWi-Fiがつながらないんだけど」と尋ねる始末。
食事の準備が整い、全員で食卓を囲んでもその光景は変わりません。孫たちはテーブルに動画を流したスマホを置いたまま食事をし、嫁もSNSの通知を気にしています。タツオさんが「学校は楽しいか?」と孫に声をかけても、「うん」と視線を画面から外さずに答えるだけ。息子夫婦もそれを注意する様子はありませんでした。
外食に出かけても息子夫婦が財布を出す素振りはなく、当たり前のようにタツオさんが全額を支払う流れに。朝起きてから夜寝るまで、全員がそれぞれの画面に没頭し、リビングには動画の効果音とゲームの電子音が響くだけ。せっかく用意した手料理にも「ごちそうさま」の一言であっさりと席を立たれ、会話のきっかけは最後までつかめないままでした。