「私が亡くなったあとも、パートナーには安心して暮らしてほしい」。そう願っていても、事実婚のパートナーには法律上の相続権がありません。何も準備をしなければ、長年支え合ってきた大切な人に財産を残せない可能性があります。本記事では、子どものいない60歳女性・まどかさんの実際の相談事例をもとに、おひとりさまや事実婚の方が知っておきたい資産承継の考え方と、老後の生活と「大切な人への想い」を両立するための終活設計について解説します。
「実の妹ではなく、いちばん感謝を伝えたい人に財産を残したい…」相続権のないパートナーに財産を残すために、60歳女性が選んだ<終活設計>【終活支援専門の行政書士が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

老後の安心も、大切な人への想いも守るために…私が提案した「終活設計」

まどかさんのお話を伺った結果、老後資金を確保しながら、将来はパートナーへ財産を残せる選択肢の一つとして、「一時払い終身保険」の加入をご提案しました。

 

この保険は、まとまった資金を活用することで、契約内容に応じた定期的な支払金を老後資金として受け取りながら、万一の際には死亡保険金を指定した受取人へ残すことができる仕組みです。まどかさんの場合は、約3,000万円を活用し、10年間にわたり毎年一定額を受け取りながら、将来はパートナーへ死亡保険金を残す設計を検討しました。

 

「老後の生活費として活用できる安心感があるうえ、もしものときには大切な人へ想いを託せる」

 

その点に魅力を感じられ、まどかさんも安心された様子でした。もちろん、外貨建て保険には為替変動や途中解約時の返戻金など注意すべき点もあります。そのため、預貯金やその他の資産とのバランスを考えながら検討することが重要です。

 

まどかさんのようなケースでは、公正証書遺言を作成し、遺言執行者を指定しておくことで、不動産や預貯金、有価証券などの名義変更や解約手続きを円滑に進めることができます。また、死後事務委任契約を結んでおけば、葬儀や納骨、病院や施設の精算、賃貸住宅の明け渡し、公共料金や携帯電話など各種契約の解約といった、相続とは別に必要となる手続きを信頼できる人へ託すことも可能です。

 

つまり、「財産を誰に残すか」と「亡くなったあとに誰がどのような手続きを行うのか」を、具体的に設計していくことが重要だと考えます。おひとりさまの方、子どものいないご夫婦、事実婚のパートナーと暮らしている方など、それぞれの事情によって必要な備えは異なります。

 

だからこそ大切なのは、自分に合った方法を早いうちから考えることです。終活は、「将来の設計」を明確にするために効果的な方法だと思います。

 

終活は「どのような人生を送りたいのか」から考える

将来について設計するためには、法律・金融・不動産などを個別に考えるのではなく、全体を見渡しながら最適な方法を組み立てることが欠かせません。

 

もし、「自分には子どもがいない」「事実婚のパートナーへ財産を残したい」「亡くなった後に迷惑をかけたくない」とお考えであれば、一度、ご自身の終活設計を見直してみてはいかがでしょうか。

 

終活で大切なのは、「どのような人生を送りたいのか」「誰に何を託したいのか」をもとに制度を整えることです。終活ではこれをするべき、といった情報があふれていますが、まずは自分がどうしたいのかを考えることが納得のいく終活につながると考えています。

 

 

伊藤 昌陸
AOMA行政書士事務所
代表