新NISAの拡充をきっかけに、将来に備えて資産運用へ励む人が急増しています。しかし、その裏で密かに問題となっているのが、手取りの多くを投資に回しすぎるあまり、手元の現金が極端に不足する「NISA貧乏」です。日常のやりくりだけでなく、恐ろしいのは病気や怪我といった突然の事態に見舞われたとき。本記事では、カメイさん(仮名/52歳)の事例から、資産形成期における生活防衛資金の重要性について考えます。
ジムで運動中、後頭部を殴られたような激しい痛みが…緊急搬送された年収1,400万円・52歳独身部長。病院から老人ホームの80歳母に「お金貸して」と電話したワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

趣味や社交費に浪費気味だが、一人で生きるには困らない資産3,500万円

カメイさんは私立大学を卒業後、大手メーカーで順調に昇進を重ね、現在は部長職として多忙な日々を送っています。年収は1,400万円。独身で「いつかは結婚したい」と思っているものの、理想の女性に出会えずにいます。一方で、休日は運動や旅行、ホームパーティーを楽しみ、充実した生活を送っていました。

 

6年前に父を亡くしてからは、一人暮らしとなった80歳の母を心配し、設備や手厚い介護体制が整った有料老人ホームへ入居させ、毎月の利用費をカメイさんが仕送りして支えていました。

 

趣味や社交に惜しみなく使う一方で、カメイさんは将来に向けた資産形成に熱心でした。ネット証券を活用し、NISAやiDeCo、定期預金、投資信託、国内外の株式などを組み合わせ、築き上げた金融資産は3,500万円に達しています。

祝日のジムで突然の激痛

悲劇が起きたのは、ある祝日の早朝でした。会員制のフィットネスジムで汗を流していたカメイさんは、運動中に突然、後頭部を殴られたような強い痛みに襲われます。

 

直後、右半身に強い痺れが走り、その場に崩れ落ちてしまいました。駆けつけたトレーナーに助けを求めようとしたものの、舌がもつれて言葉になりません。意識が朦朧とするなか、スタッフの迅速な判断で救急車が手配され、大学病院へと緊急搬送されました。

 

診断結果は「脳梗塞」。発見が早かったため命に別条はありませんでしたが、言語障害と右半身の麻痺が残る結果となりました。病室で、カメイさんは「言葉もうまく喋れず、右手も動かない。もう以前のように働くことはできないのではないか」と、深い絶望感を感じたそうです。

 

緊急連絡先に指定されていた施設にいる母が、ホームのスタッフに付き添われて病院へ駆けつけてくれました。息子の車椅子姿にショックを受けながらも、「生きていてくれてよかった」と気丈に声をかけてくれる母の姿に、カメイさんは胸が締め付けられたといいます。