家族の帰省はシニア世代にとって何よりの楽しみ。しかし、ある出来事をきっかけに子世代の帰省を固く拒絶するケースも。ある女性の事例をもとに、私たちが無意識に犯しがちな思い込みと、家族関係を見つめ直す重要性を考えます。
「もう2度と来なくて結構です」〈年金月15万円〉68歳母、長男家族の帰省を断固拒否する「まさかの理由」 ※写真はイメージです/PIXTA

「悪気はなかった」で済まない

「おばあちゃんはSNSなんて見ないだろう」――そんな孫や長男の甘い考えは、現代のシニアの実態から大きくズレていました。内閣府『令和8年版高齢社会白書』の国際比較調査によると、日本の65歳以上のスマートフォン利用率は65.0%に達しています。さらに、「SNSを利用する」と回答した割合も16.9%に上り、前回調査の10.7%から着実に上昇しているのです。

 

行政の手続きや日常の調べ物のためにスマホを使いこなす現代のシニアにとって、家族による無断投稿は決して「知らない世界の話」ではありません。

 

節子さんは、その日のうちに長男へ電話をかけました。

 

「SNSの投稿、見ました」

 

開口一番、そう切り出すと、長男は驚いたような声を上げました。

 

「えっ、もう見たの?」

「どういうつもりだったんですか」

 

事情を聞くと、投稿したのは悠斗さんでした。長男も、帰省中に写真を撮っていたことは知っていましたが、SNSに投稿するとは思っていなかったといいます。

 

「悪気はなかったんだと思うよ。面白いと思って載せただけで……」

 

その一言に、節子さんは言葉を返しました。

 

「悪気があるかどうかではありません。私に一言もなく、家の中も、私の姿も、勝手に世界中へ公開したんですよ」

 

電話の向こうで、長男はしばらく黙っていました。その日の夕方、悠斗さん本人からも電話がありました。

 

「ごめん。みんなが面白がると思った」

「ばあちゃんが嫌な思いをするとは思わなかった」

 

素直な謝罪でした。それでも節子さんの気持ちは変わりませんでした。

 

「面白いかどうかを決めるのは、投稿した本人じゃありません。撮られた側です」

 

長男は投稿を削除させました。しかし、一度SNSに公開された写真や短い動画が、完全に消えた保証はありません。近所でも「SNSで見た」と声をかけられることもありました。

 

節子さんにとって、自宅は安心して暮らす場所でした。それが、知らない誰かに見られ、話題にされる場所へ変わってしまったように感じたのです。

 

家族だから許される――。

 

そんな考え方が、今の時代には通用しなくなっているのかもしれません。