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老後を守るための線引き
その年の秋になると、膝の治療で通院が増えました。エアコンも20年以上使っており、故障すれば十数万円の出費になります。
「これから先、何歳まで生きられるんだろう。80歳、85歳まで生きることを考えたら、お金は足りるのだろうか……」
そう思い、家計を見直しました。計算すると、お盆や正月、誕生日など、孫に使っていたお金は年間で約40万円近くになっていました。10年間続けば400万円になります。
翌年のお盆前、洋子さんは娘へ電話をかけました。「今年から、お盆玉はやめたいの。みんなも大きくなったし、私は自分の老後のお金を考えたい」と伝えると、娘は少し驚いた様子でしたが、「そうだよね。今まで甘えていたかもしれない」と答えたといいます。
その年から帰省のカタチが変わりました。娘一家は自分でホテルを利用し、食事代もそれぞれが負担しました。洋子さんは孫に現金は渡さず、小さなお菓子だけを用意しました。以前より少し物足りなさを感じたのも事実です。それでも、「今年はいくら包もう」と悩むことはありませんでした。
これまでの“当たり前”がなくなり、経済的にも精神的にも余裕が生まれたという洋子さん。しっかりと家計の現状を考えたうえで、お小遣いやお祝いを渡すこともあると話します。
「無理をしない範囲というのが、贈る側も贈られる側も大事なんですね」
国立社会保障・人口問題研究所『第7回全国家庭動向調査』によると、離れて暮らす既婚の娘(遠居有配偶子・女性)に対し、夫と死別した母親が「孫に係わる経費」の援助を行った割合は40.4%に上り、何らかの経済的支援をしている割合は約7割(71.3%)に達します。
洋子さんのように、限られた年金生活の中でも孫や子世代へ無理をして援助を続けてしまう高齢者は少なくありません。長寿化に伴う老後資金への不安が高まるなか、これまでの習慣を見直し、身の丈に合った負担へと関係性をシフトすることは、親子が共に自立し、良好な関係を保つための重要な選択といえます。