電気代や物価の高騰が続くなか、年金暮らしの高齢者を中心に「冷房の使用」をためらう人は珍しくありません。しかし、酷暑に耐えるための無理な節約は、結果的により大きな代償や危険を招くことになりかねません。ある78歳女性のエピソードを通じて、酷暑を安全かつ賢く乗り切る方法を考えます。
「エアコンをつけると電気代が…」35度の酷暑に耐え続けた〈年金月12万円〉78歳女性。救急搬送で支払った「高すぎる代償」 (※写真はイメージです/PIXTA)

節約の代償は「5万7,000円」

退院後、病院から届いた請求額は4万6,800円。高額療養費制度の対象にはならない水準でした。さらに、救急搬送後に処方された薬代が6,000円、自宅療養中に利用した配食サービスが4,500円。合計すると、約5万7,000円の出費になりました。

 

和子さんは請求書を見ながら、こう漏らしました。

 

「エアコンを我慢して浮かせたかったのは、せいぜい月3,000円か4,000円。それなのに、一度倒れただけで5万円以上。何をしていたんだろうね」

 

実は、和子さんのエアコンは故障していたわけではありません。10年以上前の機種でしたが、問題なく動いていました。娘が電力会社の料金シミュレーションを確認したところ、28度設定で1日8時間使用した場合でも、1ヶ月の追加負担は3,500〜5,000円程度と見込まれました。

 

もちろん、使用時間や機種によって差はあります。それでも、和子さんが恐れていた「月1万円を超える電気代」にはならない可能性が高かったのです。

 

退院から2週間後、和子さんの部屋には新しい温湿度計が置かれていました。娘が購入したもので、室温が28度を超えると警告音が鳴る仕組みです。和子さんは、警告音が鳴るたびにエアコンをつけるようになりました。ただ、スイッチを押す瞬間には、今でもためらいがあるといいます。

 

「やっぱり、『電気代が上がる』と、頭に浮かぶんです」

 

消防庁によると、7月13日〜7月19日までの全国の熱中症による救急搬送人員は1万857人。そのうち6割以上が高齢者です。また、家の中で熱中症になる人も4割を超えています。

 

暑さを我慢する節約は、医療費という別の形で家計に跳ね返ってくることもあります。そうなると本末転倒です。自治体によっては、高齢者世帯へのエアコン購入補助や電気料金支援を実施しています。このような制度も活用して、今年の酷暑も乗り切りたいものです。