50代の2人に1人が直面…「見えないまま進行する」ミッドライフクライシス

直樹さんのように、「仕事は嫌いではない。でも、以前のように頑張れない」「この先の人生を考えると、急に不安になる」――。50代を迎えた頃、そんな心身の変化に戸惑う人は少なくありません。

このような状況は、「ミッドライフクライシス(中年の危機)」と呼ばれています。ミッドライフクライシスとは主に40代から60代にかけての男女に訪れる、アイデンティティや自己信頼の揺らぎ、心理的な葛藤や不安のことです。

野村総合研究所(NRI)が2025年1月、正社員として働く40代・50代の男女2,060人を対象に実施した「就労者の『ミッドライフクライシス』に関する調査」によると、40代・50代就労者の53.0%が、ミッドライフクライシスに「直面している」または「直面しているかもしれない」と自覚しています。30代では29.7%にとどまるのに対し、40代で52.1%、50代では53.9%。まさに「2人に1人」が抱える、中年期特有の危機なのです。

その原因として最も多く挙げられたのは「老化・体力の衰え」(63.3%)。次いで「経済状況・お金」(56.1%)、「自分の将来の健康」(53.6%)と続きます。役職定年による減収と住宅ローンを抱えたまま体調の異変に苦しむ直樹さんの姿は、この上位3項目をそのまま体現しているといえるでしょう。

深刻なのは、仕事への影響です。同調査では、ミッドライフクライシスの自覚がある人の74.5%が「以前と比べて仕事のパフォーマンスが低下していると感じることがある」と回答。低下の幅は「3割程度」(28.9%)が最多でした。

ここに、50代特有の悪循環が潜んでいます。老後への経済的な不安がクライシスの一因となり、仕事のパフォーマンスを低下させ、それが評価や収入のさらなる低下、最悪の場合は直樹さんのような休職による大幅な収入減を招きます。そしてその収入減が、お金の問題をいっそう増幅させるのです。

50代は本来、老後資金づくりの「ラストスパート」の時期です。ミッドライフクライシスは心の問題にとどまらず、老後の家計を直撃するリスクにほかなりません。