定年退職を機に、夢だったのどかな地方移住を果たした60代の夫婦。豊かな自然と温かい住民に囲まれ、セカンドライフは順調に滑り出したかに見えました。しかし、ある日届いた回覧板をきっかけに、事態は急変します。地域社会の「洗礼」とも言える過酷な現実に直面し、悩んだ末に夫婦が下した決断、そしてその後に待ち受けていた予想だにしない結末とは。地方移住の理想と現実を浮き彫りにする、ある夫婦の選択の軌跡に迫ります。
「もう、疲れました…」夢の地方移住を叶えた60歳定年夫婦だったが、「夏祭り強制参加」に限界。やんわり断った先に待つ「まさかの結末」 (※写真はイメージです/PIXTA)

断った先に待つ静かな村八分

そのような生活が3年ほど続きましたが、もともと腰に持病を抱えていた健一さん。体力の限界でした。

 

「もう体力的にきついです。今年の祭りは不参加でお願いします」

 

夏前に行われた地域の会合で、健一さんは思い切って役員に断りを出しました。その途端、集会所の空気が凍りつきました。腰の持病についても話をして、その場では了承を得ることができました。

 

しかし、その後、佐藤さん夫婦には「付き合いの悪いよそ者」というレッテルが貼られ、噂は瞬く間に集落全体へ広がりました。一度貼られたラベルは、そう簡単には剥がれません。次第に地域から浮くような存在となり、近隣の住民とは軽く会釈をする程度の関係になったといいます。

 

どこか居心地の悪さを感じる日々。東京に戻ることも考えましたが、1,500万円かけたこの家が、売れる保証はありません。タダ同然でもいい――といえるほどの余裕もありません。どのような選択が自分たちにはベストなのか、答えを出せないまま、人間関係が希薄となった地方暮らしを続けています。

 

「ここに移ってくる前に、何度か旅行で訪れていて。移住するなら“ここ”と決めていました。ただ、旅行で来るのと住むのとでは全然違いました」

 

「もし地方移住を検討しているなら、いきなり家を購入するのではなく、まずは賃賃などでお試し移住をしたほうがいい」と健一さん。その言葉には、実際に経験した人でなければ醸し出すことはできない、説得力が込められていました。