総務省の「消費者物価指数(令和8年5月分)」によると、宿泊料などを含む教養娯楽サービス価格が上昇しており、物価高はシニア世代の家計にも影響を及ぼしています。68歳男性の事例をもとに、子や孫への愛情と物価高のあいだでシニア層が抱える葛藤をみていきましょう。
「孫に会えるのは嬉しいです。でも…」年金月22万円・68歳男性、夏休み恒例「3世代旅行」を予約する手が止まったワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

「思わずため息が…」年金暮らしの68歳男性を悩ませる〈宿泊費高騰〉

総務省が発表した全国の「消費者物価指数(令和8年5月分)」によると、旅行などのレジャー費が含まれる「教養娯楽サービス」は前年同月比で2.1%上昇しています。なかでも、インバウンド需要の回復や人件費・光熱費の高騰などが価格に転嫁されていることを背景に、「宿泊料」は4.8%と大きく上昇しています。

 

限られた年金収入で暮らすシニア世代にとって、こうした娯楽費の値上がりは大きな痛手です。自分たちの暮らしと、「かわいい孫に喜んでほしい」という思いのあいだで、多くの家庭がジレンマに陥っています。

 

シゲミチさん(仮名・68歳)も、毎年恒例となっている「3世代での家族旅行」の費用に頭を抱える一人です。

 

「夏休みは毎年、孫に会えるから嬉しいです。でも今年は旅館の予約サイトを見て、ため息が出ました」

 

東京郊外にある戸建てで妻と二人暮らしをしているシゲミチさん。現役時代は中堅メーカーに勤め、年金収入は夫婦合わせて月に約22万円。持ち家の住宅ローンはすでに完済しており、約1,500万円の老後資金も確保しているため、日々の生活自体に大きな不安はありません。

 

そんなシゲミチさん夫婦にとって、一年でもっとも楽しみにしているイベントが、息子夫婦と小学3年生の孫を招いての「3世代旅行」です。初孫が生まれてから夏休みの恒例行事となっており、宿泊費や食事代などはすべてシゲミチさんが負担してきました。

 

しかし、今年はなかなか宿の予約ボタンを押せません。というのも、これまでは1泊10万円ほどの予算で収まっていたところが、今年はどこの旅館も同じようなプランで15万円近くするのです。年金暮らしのシゲミチさん夫婦にとって、5万円の支出増は大きな打撃です。

 

実際、内閣府の「令和6年度高齢者の経済生活に関する調査」によると、全国の60歳以上の男女が今後の生活で経済的な面で不安に思うこととして「物価が上昇すること」を挙げた人は74.5%にのぼります。また、今後優先的にお金を使いたいもののトップは、「自分や配偶者あるいはパートナーの医療・介護の費用」(47.5%)でした。しかし同時に「趣味やレジャー(旅行等)の費用」(32.4%)や「子や孫のための支出(学費、こづかい等)」(25.8%)を挙げる人も多く、老後資金の使い道に対する葛藤が見て取れます。