(※写真はイメージです/PIXTA)
年収560万円の息子が突きつけられた経済的限界
隆さんは必死に解決策を模索しました。
「仕送り……」と考えましたが、自身の家計を振り返ると現実の厳しさにぶち当たります。住宅ローンに加え、来年は息子の大学進学を控えており、毎月3万〜5万円の仕送りを継続的に捻出する余裕すらありませんでした。
高齢者施設への入居も、特養(特別養護老人ホーム)は原則要介護3以上で対象外、民間の有料施設は高額すぎて手が出ません。
公的な支援制度として「生活保護制度」の利用や「地域包括支援センター」への相談も調べましたが、ここには母の「プライド」という壁が立ちはだかりました。
「人様に頼るなんて恥ずかしい、迷惑をかけるくらいならひっそり暮らしたい」という真面目な母が、公的扶助を拒むことは容易に想像がつきました。
行き詰まった隆さんが下した決断は、母を自分のマンションに引き取り「同居」することでした。それは妻の家事負担や、受験を控えた息子の環境にも影響を与えます。意を決して妻に打ち明けると、妻は少しの沈黙のあと、「大変なこともあるだろうけど、家族みんなで乗り越えましょう」と言ってくれました。
高校生の息子も「部屋を片付けるよ」と言ってくれました。こうして鈴木さん一家の同居生活が始まります。
厚生労働省『2024年国民生活基礎調査』によると、「公的年金が所得の100%」という高齢者世帯は42.2%にのぼります。また所得が年金だけという世帯のうち、18.5%が「年間所得100万円以下」。本調査における所得は、税金や社会保険料の控除前の額面であることから、約2割は「月8.3万円以下の年金収入しかない」という水準であり、光子さんもここに位置することになります。
収入が「国民年金のみ」、かつ、老後資金も心もとないという高齢者の生活はひっ迫しています。一方で、自身は苦しくても、親は子どもに心配をかけまいと「大丈夫」と嘘をつくものです。
大切なのは、親が元気に見えるうちから、実際の収入や貯蓄、健康状態を具体的に把握しておくこと。いざという時はプライドを捨てて公的扶助や地域包括支援センターを活用できるよう、日頃から親子で「老後のリスク」を話し合っておくことが不可欠です。