投資ではローリスク・ローリターンと説明されることの多い「インデックス投資」。しかし、順調に利益が出ていることを確認すると、より高いリターンを得ようと「個別株投資」に手を伸ばしたくなるものです。ところが、周囲の雰囲気に流されて安易に銘柄を選び、さらに「ナンピン」を重ねてしまうと、思わぬ痛手を負う可能性も……。オモロー山下氏の著書『借金1000万円から億り人 じゃない方芸人の大逆転投資術』(KADOKAWA)より、本人の実体験を通して、「個別株投資」の落とし穴をみていきましょう。
じゃない方芸人「絶対ここが底や!」…テスラ・エヌビディア・米国インデックスに〈約1億円〉を突っ込み「1日3回ナンピン」で頭が真っ白になった〈5,000万円の含み損〉 (※写真はイメージです/PIXTA)

朝から晩まで店に立ち、10年かけて貯めた1億円が半減…頭が真っ白になった「5000万円の含み損」

とはいえ最初は、「一時的な調整だろう」「少し下がってもすぐ戻るだろう」と高をくくっていました。でも、下げはいっこうに止まりません。毎日、毎日、株価が下がっていく。朝起きて、スマホを見るたびに、資産がみるみる減っていく。1億円が、9000万円になり、8000万円になり、7000万円になり……。

 

「え、ちょっと待って」

 

最初は余裕ぶっていた僕も、だんだん笑えなくなってきました。6000万円、5500万円……。そして、気づいたときには、資産が半分近くまで吹き飛んでいました。約5000万円の含み損です

 

パソコンの画面を見ながら、頭が真っ白になりました。山下本気うどんで10年かけてコツコツ貯めた1億円。朝から晩まで店に立って、借金を返して、やっと手にした1億円。それが、たった数ヶ月で半分になってしまった。しかも、まだ下がり続けている。

 

「このまま、ゼロになってしまうんじゃないか?」という強烈な恐怖が全身を襲いました。

今度こそ底だ!…1日3回の「ナンピン」で投資資金ゼロに

さらに悪いことに、僕は致命的なミスを犯します。「ナンピン」を、やりすぎてしまったんです。

 

ナンピン(難平)とは、株価が下がったときに、さらに買い増しをして「平均取得単価」を下げる手法です。例えば100ドルで買った株が80ドルに下がったとき、80ドルで追加購入すれば平均単価は90ドルになり、株価が90ドルに戻れば損失がチャラになる、というもの。

 

焦りまくっていた僕は「早く平均単価を下げて助かりたい!」とパニックになり、1日のうちに3回もナンピンをしてしまいました。

 

米国市場がスタートしてすぐに、株価が下がって、「ここが底だろう」と買い増す。さらに下がって「今度こそ底だ!」と買い増す。市場が閉まる直前にも「絶対ここが底や!!」と買い増す……。そんな愚行を繰り返した結果、投資用のキャッシュはすべて市場に飲み込まれました。

 

「もう、買い増す余力がない……」

 

夏の時点で、僕の投資資金は完全に枯渇しました。残っているのは当面の生活費だけ。もう、これ以上買い増すことはできません。僕はただ呆然と、赤いマイナスが表示され続ける画面を見つめるしかありませんでした。

 

「このまま、ずっと下がり続けるのか……」

 

あの絶望感は、一生忘れません。

 

できることは何もない…無力感が自分を追い詰めた

芸人時代、「1週間の休み(事実上の戦力外通告)」を突きつけられたときも絶望しましたが、あれとはまた違う種類の絶望でした。

 

あのときは、必死に動いて矢部さんのお兄さんの事務所で働き口を見つけるなど、自分の行動次第で状況を変えられました。うどん屋の売上が思うようにいかない時期も、メニューを工夫したり、オペレーションを改善したり、何かしらできることはありました。

 

でも、投資は違います。市場が下がり続けている限り、僕にできることは何もない。実際は何かやり方があったのかもしれませんが、投資の素人の自分には何のアイデアも浮かびません。この圧倒的な「無力感」が、何よりもきつかったです。

 

あのときに、投資家がいかに孤独な生き物かを思い知りました。「5000万円の含み損」という地獄の痛みを分かち合える相手は、どこにもいませんでした。

 

 

オモロー山下

お笑い芸人

実業家/個人投資家

 

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