かつて、「3の倍数と3のつく数字のときだけアホになる」のネタで一世を風靡した「世界のナベアツ」。その相方だったのが、「山下本気うどん」のプロデューサーで『借金1000万円から億り人 じゃない方芸人の大逆転投資術』(KADOKAWA)著者のオモロー山下氏です。同氏は、借金1000万円から10年で「億り人」になった人物でもあります。彼はどのようにして成功をつかんだのでしょうか、みていきましょう。
起業成功だけでは到達できなかった…「山下本気うどん」を立ち上げた“じゃない方芸人”が、借金1,000万円→億り人になれた〈人生の転機〉 写真/水上俊介

借金1000万円で「広告費」はゼロ…武器になった“じゃない方芸人”の知名度

「山下本気うどん」はオープン前から話題になっていました。ありがたいことに、テレビ、雑誌などから取材依頼を多数いただいたからです。多くの飲食店は、開業時に広告宣伝費として何百万円もかけます。チラシを撒いたり、グルメサイトに有料掲載したり。でも僕にはそんな余裕はない。1000万円の借金を背負っているのに、さらに広告費を使うなんてリスクが大きすぎます。

 

だから僕は、芸人という自分の「資産」を最大限に活用することにしました。テレビに出れば、タダどころかギャラももらえて何百万人にリーチできます。しかも普通の広告と違って、番組として面白く見てもらえるから印象にも残りやすい。

 

特に宣伝効果が大きかったのが、2012年1月1日0時50分から生放送された『今年も生だよ!やりすぎ笑いっぱなし伝説』(テレビ東京)での「年明けうどん100杯に挑戦」という企画。僕は4時間の生放送中にひたすらうどんを作り続けました。

 

番組の最後に出演者の皆さんにうどんを食べていただくと絶賛の嵐。そのながれで「6月に目黒で『山下本気うどん』をオープンします!」と告知できたんです。これ以上の宣伝があるでしょうか。

SNSのバズりだけでは終わらせない…「期待外れ」を防いだ執念の味づくり

そうして迎えたオープン当日、店の前には長蛇の列ができていました。嬉しい悲鳴というやつです。でも、ここで絶対に手を抜いてはいけません。話題で来てくれた人が「大したことないじゃん」と思ったら、二度と来てくれないからです。

 

SNSで「期待外れ」と書かれたら逆効果。だから一杯一杯に全力を注ぎました。その日の茹で時間を厳守。出汁の温度を常にチェック。トッピングの配置まで丁寧に。

 

看板メニューの「鶏天タルタルぶっかけうどん」が大ヒットしました。サクサクの鶏天にボリューム満点の特製タルタルソース。これがSNSで拡散されて、さらに新しいお客さんが来てくれる。好循環が生まれました。こうした「メディア露出で集客し、味でリピーターにする」というのが、僕なりの経営戦略でした。

 

これも後に学ぶ投資の考え方と似ています。値上がりする株は、話題性(トレンド)で最初の注目を集めて、実力(ファンダメンタルズ)で投資家を定着させるんです。だから僕は、SNSのバズりだけで株を買うのは危険ですが、バズりの裏に本物の実力がある銘柄は大化けする可能性があると思っています。

 

ただ、僕には経営者として一つ致命的な弱点もありました。数字がとにかく苦手だったんです。税金の計算は税理士さんに任せていたので、毎月の決算を出してくれていましたが、あまり見ていませんでした。

 

でも、それで良かったと今は思っています。苦手なことは専門家に任せて、自分は得意なことに集中するのも経営で大事な考え方です。全部を自分でやろうとすると、肝心なところが疎かになるので。そんなふうに苦手もありながら、自分ができることを“本気”でやりました。味についてはもちろん、接客一つとっても、絶対に手を抜きませんでした。

 

強みを生かした経営戦略で、2年で1000万円の借金を完済

そのおかげか分かりませんが、結果的に僕は2年で1000万円の借金を完済しました。1年目に今田耕司さん、宮迫博之さんにそれぞれ250万円ずつ、計500万円。2年目に残りの500万円。当初は完済までに3年はかかると思っていたので、自分でも驚きです。

 

利息はいらないと言われていましたが、代わりにお2人にはお礼の品を贈りました。今田さんにはクロムハーツの置物。宮迫さんにはグッチのキャリーケース。僕なりに感謝の気持ちを形にしたかったんです。

 

「山下、ありがとうな。よう頑張ったな」

 

今田さんにそう言われたとき、やっぱり込み上げてくるものがありました。